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社会現象アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』と『虎に翼』の共通点

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』【公式Xより】
アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』【公式Xより】

社会派ドラマとエンターテインメントを驚きのアイデア力と繊細な筆致で融合させる吉田恵里香。そこにはアニメ脚本で得た経験も生かされているのではないだろうか。吉田はドラマだけではなく、TVアニメ『TIGER & BUNNY』(2011、※西田征史との共同脚本)や劇場版アニメ『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)などの構成や脚本を手がけている。

特に有名なのが、2022年に放送された『ぼっち・ざ・ろっく!』だ。本作はギターを愛する孤独な少女・後藤ひとりが、ひょんなことから伊地知虹夏が率いる「結束バンド」に加入し、みんなとともに音楽を奏でる中で成長していく青春群像劇。原作は4コマであり、起承転結で構成された1つ1つのエピソードを上手くシーンを追加しながら滑らかに繋いでいる。

また本作は基本的にコミカルだが、主人公である後藤以外のキャラクターにもスポットを当てながら、1人ひとりの心情を丁寧に描いていく。幼い頃に母親が亡くなり、寂しがる自分のためにバンドを辞め、ライブハウスという居場所を与えてくれた姉の分まで人気になることを夢見る伊地知虹夏。

元々は別のバンドで活動していたが、売れるために売れ筋の歌詞に方向転換したことから脱退した山田リョウ。そんな彼女に憧れ、「ギターが弾ける」と嘘をついて結束バンドに加入し、ライブ前に逃げ出した過去を持つ喜多郁代。

そうしたサイドストーリーを、物語の本筋に心地良く絡めていくのは吉田が得意とするところ。あらゆる視点からエピソードを紡いでいきながら、最終的には一つの物語に終始していく。そんな吉田脚本の特徴を端的に表しているのが、『ぼっち・ざ・ろっく!』に出てくる山田リョウの「バラバラの個性が集まってひとつの音楽になって、それが結束バンドの色になるんだから」という台詞だ。

多くの人が「これは私の物語だ」と感じている『虎に翼』も同じ。一人ひとりの個性はバラバラだが、あらゆる理不尽と闘うすべての人の物語であり、私たち視聴者も決して無関係ではない。私たちのために声を上げ、闘ってくれた寅子たちの姿を見ながら、次の世代の人たちのために何ができるかを考えていきたいものだ。

(文・苫とり子)

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