フィリピンの刑務所で万事休す…。
海外でお縄になったエリートビジネスマンの悲喜劇
『天国から来た男たち』(2001)
原題:The Guys from Paradise
製作国:日本
監督:三池崇史
原作:林洋司
脚本:橋本以蔵、江良至
キャスト:吉川晃司、山崎努、大塚寧々
【作品内容】
身に覚えのない覚醒剤所持の冤罪で、出張先のフィリピンのサンタクルス刑務所に投獄されたエリートビジネスマン・早坂幸平と、そこに投獄された日本人囚人たちの生き様を描くコメディー。実話を基にした林洋司氏による同名小説の映画化作品である。
【注目ポイント】
投獄された早坂が見たものは、肩書や日本人的尺度の全く通用しないアジアの混沌と犯罪者たちの巣窟。会社や妻からも見捨てられ、何もかも失った者。だが、この世の最底辺のような獄中でも日本人の囚人たちは、タフに生き延びようとする
この刑務所は看守に賄賂を渡せば、外出はおろか、女も抱き放題という謎のルールに支配され、日本人囚人のリーダー格の吉田は刑務所長と共謀して、麻薬売買で金儲けさえ行っている始末。やがて早坂は、ここが心の安らぐ真の場所、ずっと求めていたパラダイスだったことに気付く。
そして、お互いを騙し合い、裏切り合いながら、彼らはやがて「天国から来た男たち」と呼ばれることになる。
やがて、吉田と組んで、国外逃亡を計画するも失敗に終わり、小さな村に身を隠し、九死に一生を得る。その後、早坂は人生をやり直そうと刑務所へ戻り、大統領選にジュアン・コッペイ・マビーニという名で出馬し、見事、当選を果たすというエンディングを迎えるのだ。
フィリピンという国のカオスなイメージを逆手に取った、メチャクチャなストーリー展開のようにも思えるが、“なんだか、あり得そう…”と思わせるような適度なデフォルメが、本作のユニークな魅力となっている。
(文・寺島武志)