杉下右京ファンには堪らぬ珠玉の神回
シーズン12「右京さんの友達」
放送日:2014年1月22日
脚本:真野勝成
犯人役:尾美としのり
本エピソードの素晴らしいところは、”物語の美しさ”に尽きる。
趣味は自身のHPでミステリー小説の批評をすること。口癖は「信じられるのは紅茶と犬だけ」という毒島浩一42歳無職。同じ紅茶好きとして右京と意気投合した毒島はカイトも交え自宅での茶会を開催する。会は和やかに進むが、毒島は隣室の佐藤静香が、小説家である恋人の烏森に殺された事件について語りはじめる。
事件に興味を持った特命係は捜査を開始。そして導き出された結論は、毒島が静香を殺害していたというものだった。静香と毒島は犬をきっかけに親しくなっており、毒島は彼女に淡い恋心を抱いていた。一方の烏森は、小説が売れず思い悩んだ末に、静香を殺して自分も死ぬことを決意する。
2人は揉み合いになり、烏森は昏倒してしまう。烏森が死んだと思った静香はパニックになり、物音を聞いて駆け付けた毒島にナイフを握らせると、そこへ飛び込んで命を落とす。
毒島は彼女が飼っていた犬が死ぬのを見届け、右京に逮捕してほしい気持ちがあり茶会を開いたのだった。連行される毒島を見て、捜査一課はカイトに彼が何者か尋ねる。
「右京さんの、友達です」
この回では、杉下右京は”孤独ではなく孤高の存在である”ということが如実に表現された。物語は、右京が執筆する探偵小説『孤独の研究』の独白を織り交ぜながら進んでいく。毒島との出会いと交流、助手K君(カイト)との丁々発止のやり取り、文学作品のような美しくも残酷な事件の発生…。
紅茶という右京にとって重要なアイテムをこれでもかと活用してドラマに深みを持たせ、名前こそ出さないものの亀山についての言及があるなど、ファンが喜ぶ小憎らしい演出も多い。
脚本家の真野勝成は本作が『相棒』初脚本で、以降も『相棒』の歴史にフォーカスを当てたファン垂涎の物語を数多く執筆している。
とりわけ本エピソードは、プロデューサーと何度も打ち合せを重ねて誕生した珠玉の一作である。杉下右京が好きな人には必ず刺さると太鼓判を押してお勧めしたい。