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2024年春ドラマ、演技が最高だった俳優は? ベストアクター5選。作品のクオリティを引き上げた役者をセレクト

2024年春ドラマは、リーガルものや医療ものを中心に話題作が目白押しだった。若手から中堅、ベテランに至るまで様々な男性俳優が活躍を見せたが、今回は、とりわけ素晴らしい演技を披露し、視聴者を魅了した俳優を独自の視点で選出。殊勲賞、敢闘賞、技能賞、MVPに分けて、その芝居の魅力を解説していく。(文・あまのさき)

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【著者プロフィール:あまのさき】

アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

“イヤな奴”から“切ないヤツ”へのスイッチが見事だった

殊勲賞は『Re:リベンジ-欲望の果てに-』錦戸亮

錦戸亮Getty Images

 赤楚衛二演じる天堂海斗が、父・智信(光石研)の死をきっかけに否応なく天堂記念病院での権力争いに巻き込まれていく様を描いたリベンジサスペンス『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)。錦戸亮は、海斗と理事長の座を争う優秀な外科医・大友郁弥を演じた。

 不可解な父の死、そして葬式での誘拐・監禁…自身を襲う様々な出来事にただ困惑するばかりの海斗に、当初は視聴者も共感や同情心を抱いたはず。

 ゆえに智信からのスカウトで天堂記念病院にやってきた大友は、登場するやいなやヒールの扱い。実際にこのときの大友は海斗をあざ笑うような場面が多く、その表情は“イヤな奴”そのもの。清々しいほどヒールに徹していた。

 物語の中盤からは、大友が、権力の渦の中で暴走していく海斗を止めようとする動きが目立つようになる。しかし、いくら頭の切れる大友でも、理事長となった海斗を止めることは容易ではない。

 結果的に、手術中の医療過誤のせいで死亡したと疑われる患者の病理解剖も叶わず、証拠となる可能性のあったレントゲン写真も改ざんされてしまった。

 これらを経て、怒りや哀しみ、焦りといった大友の人間味がじんわりとにじみ出してくるようになる。この表情が、前半戦での“イヤな奴”に引けを取らぬほど秀逸なのだ。

 印象に残っているのは、婚約者の陽月(芳根京子)に別れを告げられて1人残されたとき。

 大友が海斗憎さで、彼の恋人だった陽月を奪ったのだろうと、大方は予想していた。このときの大友の表情は哀しみの色が濃かった。続く大友のセリフはなかったけれど、その表情はたしかに彼女を愛していたのだと雄弁に物語っていた。

 その後、陽月の妹・美咲(白山乃愛)の死について、海斗に医療過誤の可能性を直談判したときの表情も印象的だった。「もう話は終わりました」と切り上げられ、大友は本当に傷ついた顔をしているように見えた。

 大友は医師としての自身の実力に自信もあったのだろうが、ただ真っ当でありたいだけのような気がしてならない。

 セリフがなかろうと、その心の内を様々に推測したくなる表情の雄弁さは、俳優・錦戸亮の大きな魅力の1つ。それを存分に堪能できる作品となった。

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