疲れた心に刺さるヘルシーな魅力
●技能賞は『9ボーダー』井之脇海
子役時代から様々な作品に出演している井之脇海。正直言って恋愛作品に出ていても、あまりキュンとする対象として井之脇を観ていた記憶がないのだが、『9ボーダー』(TBS系)で一気にイメージが変わった。
『9ボーダー』は19歳、29歳、39歳の3姉妹がそれぞれの年代のラストイヤーを模索しながら生きる日々を描いたヒューマンラブストーリー。そのなかで井之脇は、長女・大庭六月(木南晴夏)の会計事務所で働く新米会計士の松嶋朔を演じた。
この朔が、夫に浮気されて離婚してしまった六月の心にいい塩梅で寄り添いつつ、適切なポイントでグッと距離を縮めてきてくれるのだ。
例えば、六月が夫と最後に会うことを知っていた朔は、苦いコーヒーではなく、“甘い”キャラメルラテを差し入れてくれるシーンがあった。こういう細やかな気遣いというか優しさが、傷ついているときほど沁みるもの。
そうかと思えば、バスケットボールをしていてゴールが決まったら告白の返事をしてほしいと六月にお願いする場面もあった。しかし、あえなく失敗し、あからさまに悔しがる姿は、いかにも年下男子っぽくてかわいかった。
上記のやりとりを、キュンとさせつつも、ヘルシーに表現しているのが井之脇の魅力だろう。とても清らかな感じがするのだ。きっと井之脇の芝居は、いくつもの恋愛を経験してきただろう多くのアラフォー女性たちにも刺さったはずだ。