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ギャップのある役を演じて卓越した演技力が覚醒

MVPは『東京タワー』松田元太

Travis Japanの松田元太
Travis Japanの松田元太Getty Images

 バラエティ番組での活躍が目立っていたTravis Japanの松田元太がすごかった。

 『東京タワー』は江國香織の同名小説が原作で、過去には黒木瞳と岡田准一主演で映画化もされている。大学生の小島透(永瀬廉)が浅野詩史(板谷由夏)と恋に落ちる物語だ。

 そのなかで松田は、透の高校時代からの友人で、透に憧れて自身も「年上女性との恋愛」に身を焦がす大学生・大原耕二を演じた。

 耕二はよくも悪くも軽いノリのザ 大学生という印象。やや長めの髪にハイライトを入れた松田は、明るく朗らかにこの役を乗りこなす。ところが、透の真似をするように、専業主婦・喜美子(MEGUMI)と関係を持ち始めてから様子が変わっていく。

 まず、完全なる“バラエティ班”だと思っていた松田が放つ色気に圧倒された。Travis Japanのステージで見せる顔とは明らかに違う。20歳以上年の離れた人妻を落とそうとする姿からは、過信によって相手を見下す内面が透けて見え、普段の松田とはまるで別人のように見えた。

 そしてその後、耕二の不倫は喜美子の娘によって、耕二の恋人・由利(なえなの)の知るところとなり、唐突に関係は終わる。しまいには、耕二はぼろぼろになり、喜美子を心の底から愛していたことに気付く。

 やはり忘れられないと、喜美子が働くスーパーまで押しかける耕二。しかし最終話では、喜美子にこっぴどく振られてしまう。もちろんこれは耕二の未来を思った喜美子の優しさだったわけだが、耕二もそれを瞬時に理解して売り言葉に買い言葉で返すのだ。

 その間、耕二は涙を流す。これまできっと恋愛に苦労なんかしてこなかっただろう耕二が初めて味わった感情だったのだろう。なんの抑制も効かなくなったみたいに溢れ出る涙に、耕二の純真な心を見た。

 この純度こそ、松田が演じた耕二の魅力。耕二はチャラいが、そこに嫌味はない。基本的にはまっすぐに育ってきた、自分に自信のある20代の大学生。きっと松田自身に純真さが備わっているからこそ、このような役に命を吹き込むことができたのではないだろうか。

 8年後を舞台にしたラストシーンでは、別の女性と出会い、3児の父となり「ポカポカ大家族」を築いている耕二の姿が描かれた。飛躍に富んだ展開であるため、さぞかし演じるのが難しかっただろうと想像されるが、松田の芝居には違和感が全くなかった。

 『東京タワー』で松田が演じた耕二はまさにハマり役だった。次はまったく違う作品で、俳優・松田元太が見られることを楽しみにしている。

(文・あまのさき)

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