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踊るダンサーにクサいナレーション…。怪奇色が強すぎる加山雄三版

大林宣彦
宍戸錠版の監督を務めた大林宣彦Getty Images

 さて、宍戸錠版の脚本を担当したジェームス三木は、その後松竹株式会社に企画を持ち込み、連続ドラマ化にこぎつけている。彼がブラック・ジャック役に新たに指名したのは、加山雄三。当時、若大将シリーズで一世を風靡していた名俳優だ。とはいえ本作、重々しい加山の演技も相まって、全体的におどろおどろしい雰囲気で、前回の宍戸錠版よりも一層怪奇色が強まっている。

 特に印象的なのはオープニングだろう。テクノ界隈でカルト的な人気を誇ったヒカシューの音楽を背景に合わせて、白塗りのダンサーたちがクネクネと踊り出す。そこに、「ある人は愛の伝道師と称え、ある人は冷酷な守銭奴と呼ぶ…」という田中邦衛のクサいナレーションが続き、スモークの中、ブラック・ジャックが黒いマント(なんとコシノジュンコがデザインしている)を翻して登場する。

 決めゼリフは「この世に果たしてロマンはあるか?人生を彩る愛はあるか?」だ。これでは、医療漫画ではなく、『バットマン』かなにかと勘違いしてしまいそうだ。

 ついでに言えば、本作に登場するブラック・ジャック、表の顔は画廊を経営する実業家の坂東次郎で、必要な時だけマントを羽織って登場する。昼と夜で別の顔を持っているのだ。しかも、本作では、ブラック・ジャックの助手など、原作に登場しないキャラクターが数多く登場しており、代わりにドクター・キリコをはじめとする原作の主要キャラクターが登場しない。かなりオリジナル色が強いのだ。

 とはいえ本作、物語自体はかなり原作に準拠しており、原作のヒューマニズムもしっかり受け継がれている。加えて、前田吟や池上季実子、江波杏子など、各話に登場する役者陣も豪華だ。原作を踏まえた上で改めて観てみると面白いかもしれない。

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