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アドリブなのか台本通りなのかわからない自然体の演技

写真:宮城夏子
写真:宮城夏子

 とくに放送直後SNSでも大反響だった9話の、14分間にわたる長回しのラストシーンは、今でも思い出したら泣きそうになってしまうぐらい心揺さぶられた。

 三瓶先生が、亡くなってしまった重度障害者の兄について涙を流しながらミヤビに打ち明けるシーン。今、果たして自分はドラマの映像を見ているのか、それともドキュメンタリーを見ているのかわからなくなるぐらい鮮烈かつリアルで、引き込まれた。
 
 あまり感情を表に出すことのない三瓶先生の見せた涙と、そんな三瓶先生を優しく、力強く包み込むミヤビ。そんな2人があまりにも尊くて、決してラブシーンではないはずなのに、ものすごく愛を感じた。あの14分間の、もはや演技を超越している2人のやりとりは、後世まで語り継がれるべき名シーンだと思う。

 こうして『アンメット』を機に若葉竜也という俳優が気になって仕方なくなり調べたところ、実は筆者がこれまで拝見したことのある作品に多数出演しており、「え! あの役も若葉さんだったの!?」と衝撃を受けた。

 たとえば『愛がなんだ』(2018)のナカハラ。好きな女の子に身勝手に振り回され、それでも献身的に尽くし、寂しそうに笑うあのナカハラが三瓶先生と同じ俳優さんだとは思ってもいなかった。あと個人的に好きな映画『神は見返りを求める』(2022)に出てくるクズイケメン・梅川。梅川は、あまりにも軽薄すぎて腹が立つものの、1周回ってかわいそうになる役柄なのだが、「実際にこういう人いそう…」と思わせるリアルさがあった。

 この「実際にいるよね」どころか「もはや会ったことすらある気がする」と、観客に思わせる卓越した表現力こそ俳優・若葉竜也の魅力に他ならない。

 とにかく若葉竜也は、“演技だと思えない演技”が、あまりにも上手すぎる。それは彼の主演映画『街の上で』(2021)でも感じた。

『街の上で』自体が何気ない日常を描いていて地に足のついたストーリーではあるのだが、そのリアルな世界観に共感を持たせるには、ナチュラルな演技が必須だ。「実際こういう男の子いるよね」と思わせる説得力と、生々しさ。若葉の演じる主人公・青は、完全に「下北沢に行ったら会えそうな男の子」だった。とはいえ、実際はこんなかっこよくて雰囲気のある男の子はそうそういないのだが…。

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