千葉雄大の感極まった名演が素晴らしかった
第5話 ミヤビに全科専門医レベルを目指す理由を明かす星前
テレビドラマでは、演者がセリフを噛んだり、イントネーションを間違えた場面をそのまま放送することはなかなかない。しかし、第5話では、星前を演じる千葉雄大がセリフを噛んだシーンがそのまま使われていた。ここに、『アンメット』らしさを感じた人も多いのではないだろうか。
このシーンで星前は、なぜ全科で専門医レベルを目指しているのか? そのきっかけとなったエピソード(母親が専門医にたらい回しにされた挙句、倒れてしまった過去がある)を、ミヤビに明かしていた。そのときに感じた苛立ちや、目標になかなか届かないことの悔しさ。どこにもぶつけられないモヤモヤした気持ちを、星前は声を震わせながらミヤビに訴える。
心の奥をさらけ出すような場面だからこそ、セリフを噛むのはリアルだし、「たしかに、こういう話をしている時、端正に淀みなく喋ることはできないよなぁ」と共感した。もちろん、千葉もわざと噛んだわけでなく、役に入り込み、感極まったがゆえに言葉に詰まったわけで、またやり直したとしても、きっと同じ演技にはならない。たまたま生まれたものだからこそ、胸に迫る芝居になったのだ。
リアリティを追求してきた『アンメット』だからこそ、世に送り出せた名シーン。千葉雄大の役者としての凄みを改めて感じた瞬間でもあった。