人類の限界を拡張する「未来へのタイムトラベル」
『2001年宇宙の旅』(1968)のコールドスリープ
製作国:イギリス、アメリカ合衆国
上映時間:142分
原題:2001: A Space Odyssey
監督:スタンリー・キューブリック
脚本:スタンリー・キューブリック、アーサー・C・クラーク
キャスト:キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター、ダグラス・レイン
【作品内容】
月に人類が移住可能になった2001年。アメリカ合衆国宇宙評議会のヘイウッド・フロイド博士は、月で発見された謎の物体「TMA-1」を調査するため、月面のクラビウス基地へと向かう。
それから18ヶ月後。デヴィッド・ボーマンら5名の乗組員は、史上最高の人工知能HAL9000型コンピュータとともに、宇宙船ディスカバリー号で木星を目指していた。その途上、HALは突然暴走。人工冬眠中の3名の乗組員の生命維持装置を切ってしまう…。
【テクノロジーの概要】
2020年6月、科学雑誌『Nature』に掲載されたとある論文が、全世界に衝撃を与えた。それは、冬眠しないはずのマウスを「冬眠に極めて近い状態」に誘導することに成功した、というものだった。
発表したのは筑波大学と理化学研究所の冬眠生物学研究チームの合同研究チーム。理化学研究所のチームリーダーである砂川玄志郎氏は、元々小児科医として活躍しており、自身の臨床の経験から冬眠の研究をはじめたのだという。
本研究のカギとなるのは、脳の視床下部に位置する「Qニューロン」と呼ばれる神経細胞群だ。
実験では、この神経細胞群を刺激することで、冬眠しないはずのマウスやラットを冬眠に似た「QIH(Q神経誘導性低代謝)」と呼ばれる低代謝状態に誘導することが可能になったという。
ヒトの脳にもこの「Qニューロン」があるとすれば、ヒトも同じように冬眠に似た状態にすることができるかも、というわけだ。
人体を低体温・低代謝状態にし、老化速度を遅らせる「コールドスリープ」は、『2001年宇宙の旅』をはじめ、多くのSF映画に登場してきた。
今後、ヒトの「Qニューロン」を発見できれば、ヒトの身体を冷凍保存し、未来へと送り届ける「未来へのタイムトラベル」が可能になるかもしれない。ただ、実現には、高い倫理的なハードルが立ちはだかっているのは言うまでもない。