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天才女優のデビュー作、最も衝撃的だった作品は? 伝説の初出演作5選。世間にインパクトを与えた日本映画の快作をセレクト

text by 市川ノン

今や映画界に欠かせない存在となった女優にも、スターダムに上り詰める最初の一歩があった。特別な輝きを放つ彼女たちは、デビュー当時から強烈なインパクトを残し、多くの観客を虜にしてきた。そこで今回は、今をときめく女優たちの衝撃のスクリーンデビュー作を5本セレクトして紹介する。(文・市川ノン)

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悪の華のごときサイコパス役に扮し一世一代の演技を披露

●小松菜奈『渇き。』(2014)

小松菜奈
小松菜奈【Getty Images】

監督:中島哲也
脚本:中島哲也、門間宣裕
出演:役所広司、小松菜奈、妻夫木聡、清水尋也、二階堂ふみ、橋本愛、國村隼、黒沢あすか、青木崇高、オダギリジョー、中谷美紀

【作品内容】

 一人娘の加奈子(小松菜奈)が失踪し、加奈子の父であり元刑事の藤島昭和(役所広司)が、加奈子の行方を捜す。だが、捜索を進めていくうちに、成績優秀で誰からも愛される加奈子のイメージは大きく覆る。多くの犯罪に加担する娘の行方と、その目的をロクデナシの父親が探るというストーリーだ。

 原作は『このミステリーがすごい!』大賞の『果てしなき渇き』(深町秋生)。監督は、映画『下妻物語』(2004)『嫌われ松子の一生』(2006)『告白』(2010)などを手がけた中島哲也である。この作品で小松菜奈は日本アカデミー賞新人俳優賞、報知映画賞新人賞、スポニチグランプリ新人賞を受賞した。

【注目ポイント】

 モデル出身の小松菜奈が、オーディションの末に出演を勝ち取った。色白、大人びた雰囲気、モデルのようと原作小説で表現されている加奈子だが、まさに小松の風貌はピタリと当てはまっている。

 その可憐な見た目の一方で、加奈子はあらゆる悪事に関係し、自身の復讐のためには周囲を悲劇に巻き込むことも厭わないサイコパスである。

 加奈子の父親の藤島、刑事の妻夫木聡、オダギリジョー、加奈子の元担任である中谷美紀など錚々たるメンツだが、全員が狂っており、まともな人間は誰ひとりいない。無論、加奈子も同様であるが、見た目の清廉さとのギャップと人心掌握に長けた人間性に思わず観客も取り込まれてしまいそうになる。

「あなたのこと全部わかってるよ」と囁き、相手が欲しい言葉を投げかける加奈子。彼女は、父親でも他の男でもキスすることをいとわない。じっと見つめる小松の三白眼には、観る者を釘づけにする独特な魅力があふれている。

 クスリ、売春、暴力などが怒涛のごとく押し寄せる映画『渇き。』において、加奈子は悪の華のごとき圧倒的な存在だ。半ばファンタジーの世界の住人だが、そうした役に実在感を持たせることができたのは、ひとえに小松の、ただそこにいるだけで人を惹きつけるオーラの賜物だろう。

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