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『ユージュアル・サスペクツ』に匹敵する名作コント

●ファイヤーサンダー『ダイイングメッセージ』

ファイヤーサンダー公式instagramより
ファイヤーサンダー公式instagramより

「なんやねん!クプクドゥブフて!そんなんナシやろ!」

 ワタナベエンターテインメント所属のお笑いコンビ・ファイヤーサンダー(ボケ:﨑山祐、ツッコミ:こてつ)のネタ『ダイイングメッセージ』の筋書きは以下のとおりだ。

 舞台はとある難事件の捜査本部。被害者の残した「KPKDBF」というダイイングメッセージを、1週間かけて解読した刑事だったが、そこで新たに「クプクドゥブフ」という人物の存在が浮上し、これまでの必死の解読が無駄だったということに気づき始める。

 このネタを基にした映画『ダイイングメッセージ』の監督には、『ユージュアル・サスペクツ』(1995)のブライアン・シンガーはどうだろうか。このコントの最大の山場は、なんと言っても「クプクドゥブフ」の名が捜査線上に浮上した瞬間である(ファイヤーサンダーの公式YouTubeチャンネルがアップしているネタ動画の1分36秒あたり)。

 そこで、映画版ではバラシまでの1分36秒を、映画全体の9割の長さに引き伸ばす。つまりは、刑事が「KPKDBF」の解読に捧げた1週間を丁寧に語ることで、より「クプクドゥブフ」の名前が出たときの絶望感を煽る。映画の大半を占める謎解きサスペンスで振りに振って、「自分の必死の解読など意味がなかった」という事実を突きつける。

 答えは最初からすぐ近くにあった…映画史に燦然と輝く『ユージュアル・サスペクツ』の大どんでん返しのような衝撃を観客に与えるのだ。メインビジュアルには、日本の配給会社あるあるの「あなたは必ず騙される」的なコピーがつけられ、SNS上で話題の映画になること間違いなしだ。

(文・前田知礼)

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