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何度観ても意味不明…。
ギター・ウルフ・セイジの言葉で魅力に開眼

『狂い咲きサンダーロード』(1980)

―――続いてセレクトしていただいたのは、石井聰亙(現在は石井岳龍)監督が1980年に発表したカルト的人気を誇る名作です。
「これは東京出てきた後に、近所のレンタルビデオ店で借りて観た映画です」

―――永野さん自身のストーリーが、続いているわけですね(笑)。
「そう、続いているんですよ。東京で専門学校に入学したんですけど、ほとんど学校行かず、『お笑いやりたいなぁ、どうしよう』ってただ考えているだけ。夜は飲み会行ったりして楽しんでいました。全然孤独でもなく(笑)。で、そのビデオ店の”カルト”コーナーに陳列されていたんです。なんか、惹かれる自分がいて。東京出て来たからには、宮崎にはなかったカルチャーを全部触れたいっていう、背伸びする時期だったのかな。前から気になっていた、ジョン・ウォーターズ監督の『ピンクフラミンゴ』と並んで置いてあったので、借りたんですよ」

写真Wakaco

―なるほど。
「でも、最初は魅力が全然分かんなかったんです。『何これ、面白くない、嘘でしょ、こんなのが良いっていう人いるの?』って思っていて。その後、引っ越した先のビデオ屋でバイトするんですけど、そこでもう一度借りてみたら、やっぱり面白くなくて(笑)。それから少しして、ギター・ウルフ(日本のロックバンド)のファンになったんです。そしたら、セイジ(ヴォーカル&ギター)さんがライブ前に気合入れる時は『燃えよドラゴン』か『狂い咲きサンダーロード』か『バック・トゥー・ザ ・フューチャー』を観ると言っていて、「あ~そういう見方か!」って思って」

―――セイジさんの言葉が『狂い咲きサンダーロード』の魅力に気づくきっかけになったんですね。
「物語というより、作品に込められた精神性みたいな。登場人物が終始ブチ切れている映画ですし。セイジさんの言葉を聞いて、『精神を覚醒されるための映画なんだ!』って思ったら、スッと入ってきて。そこからは大好きになりましたね!」

―――自主制作映画ならではの異様なエネルギーが充満していますよね。
「こんな映画、他にないと思っています。ハチャメチャで、したいこと全部詰め込んで、わかる奴だけわかれば良いじゃんっていう。主演の山田辰夫さんの目つきとか、役者もスタッフも知り合いをかき集めて、勢いで撮ったんだろうなぁって思わせるパワーがありますよね、変じゃないですか、映像が。こっちは『トップガン』とかに目が慣れているから、なんか気持ち悪いなぁって(笑)」

―――映像のうわべだけ観ていてはわからない魅力があると。
「エネルギーを観ましょうっていう、映画だと思うんです。あと、僕、昔、この映画のイベントに出演した経験があるんですよ」

写真Wakaco

―――そうみたいですね!
「他媒体のインタビューで、『僕のネタは、凡人・狂い咲きサンダーロード!』と、言ったことがあって。その頃、僕はちょっと売れ始めた時期だったのかな。そうしたら、この映画をブルーレイ化するための、クラウドファンディングイベントに呼ばれまして。そこで石井監督にお会いして、一つだけお願いをしました。「もしリメイクすることがあったら、絶対に主役は三白眼の一重まぶたで、演技出来ない奴にやらせて下さい」と(笑)」

―――故・山田辰夫さんを超える人材を探すのは難しそうですね(笑)。
「無理でしょうね。あと、山田さんのアドリブのセリフも、いわゆるパンチラインばかりなのが、たまらないんですよ。『百姓~!』とか言って(笑)」

―――あのチンピラ感あふれる甲高い独特な声。最高ですよね!
「安っぽいアクションも、観ているうちに愛せてくるんですよね。クライマックスの大戦争も、作っているうちにワケが分からなくなって、まさにカオス。子供が描いた話をそのまま映画にしたような世界観なんですよね。『街中の奴をぶっ殺してやる』とかねえ。何でそんなことされなきゃいけないんだよ、っていうツッコミを入れたくなります。そもそも映画では、街中の奴らも20人くらいしか登場しないじゃんって(笑)」

―――ハチャメチャさが魅力の映画ですよね。
「石井監督に聞いたんですけど、当時、ブルース・スプリングスティーンの『涙のサンダーロード』という曲がヒットしていて、『俺の青春は涙なんてもんじゃない。狂い咲きサンダーロードだ!』と1人で興奮して、内容一個も決まってないのに、タイトルだけ決めて、そのまま寝たらしいですよ(笑)。だから、劇中でブルース・スプリングスティーンのポスターが貼ってあったり、関連グッズが置かれているんですよね」

―――そういうことなんですね!
「“スーパー右翼支部”のテロップとか…。そういうセンスもヤバイです(笑)」

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