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事件が人生をばらばらにした…。DNAの鑑定ミスが生んだ戦後最大級の冤罪事件

『エルピス -希望、あるいは災い-』(2022)→足利事件

長澤まさみ

主演の長澤まさみ【Getty Images】

放送期間: 2022年10月24日〜12月26日
脚本:渡辺あや
キャスト:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平

【作品内容】

 大洋テレビの女性アナウンサー浅川恵那は、スキャンダルから深夜の情報バラエティ番組『フライデーボンボン』のコーナーMCを担当することになる。そんな中、浅川は、新人ディレクターの岸本拓朗から、2006年に発生した「八頭尾山連続殺人事件」の犯人である松本良夫が、実は冤罪かもしれないと相談され―。

【注目ポイント】

 2022年にフジテレビ系で放送され、ギャラクシー賞テレビ部門月刊賞(2022年12月度)をはじめ、多くの賞を受賞したドラマ『エルピス』。冤罪を扱った本作では、9冊の図書が参考文献として挙げられており、うち4冊が冤罪事件として名高い足利事件関連の書籍となっている。

 1990年5月。栃木県足利市の渡良瀬川河川敷で、当時4歳の女児の遺体が発見された。そして、事件翌年の1991年、栃木県警は、同市内に住む菅家利和を誘拐と殺人の容疑で逮捕。決め手となったのは、「女児の下着に付着していた体液のDNA型と菅家のDNA型が一致した」ということだった。

 その後、菅家は有罪(無期懲役刑)が確定し服役していたが、裁判では一貫して無罪を主張。2008年には、日本テレビの記者であった清水潔が自供の矛盾点やDNA鑑定の問題点を指摘する。

 そして、2009年、弁護側推薦の鑑定人によって再鑑定を行った結果、当初のDNA鑑定が誤りであったという鑑定結果が出る。そして、2010年3月、宇都宮地方裁判所が完全無罪を宣告。検察官は、法廷で菅家に直接謝罪したという。

 さて、足利事件のDNA再鑑定の動きが固まった2008年頃、死刑を執行された人物がいる。1992年に福岡県飯塚市で発生したいわゆる飯塚事件で逮捕・起訴された久間三千年だ。状況証拠の積み重ねのみで有罪になった久間は、生前頑なに無罪を主張し続けており、死刑執行直前も激しい怒りを表明していたという。遺族による再三の再審要求も今のところ実現していない。

 釈放された菅家は、収監されている間に父と母を相次いで失くしており、「事件が、家族も、自分の人生もばらばらにした」と述べている。起訴されればほぼ100%が有罪になるという日本の司法制度。その欠陥が生み出す罪の重さは計り知れない。

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