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モテない役もなぜかハマる…。
前田公輝の真骨頂とは

『私をもらって~追憶編~』第3話 ©日本テレビ
『私をもらって~追憶編~』第3話 ©日本テレビ

 NHKではBS時代劇『赤ひげ』シリーズでの津川玄三役を経て、2022年には連続テレビ小説『ちむどんどん』で念願だった朝ドラ初出演を果たした前田。彼が演じたのは、ヒロインである暢子(黒島結菜)の幼馴染・智だ。

 幼い頃から病弱な母に代わって弟や妹たちの面倒を見つつ、家業である豆腐屋を切り盛りする優しい青年で、暢子の妹・歌子(上白石萌歌)にとっては初恋の人。一方、恋愛に関しては不器用で、密かに想いを寄せる暢子に尽くすも、時に空回りしてしまう智を可笑しみを持って演じた。

 以降、前田は恋愛ドラマでの活躍が目覚ましい。特に大きな話題となったのが、『セクシー田中さん』(日本テレビ系、2023)での小西役。小西は広告代理店勤務しており、智とは対照的に恋愛の猛者で、人の心を掌握する術に長けている。その実、自信がなく、本当に自分を誰にも見せようとしない。

 だが、本来は自分と似ているが、懸命に変わろうと努力する朱里(生見愛瑠)と出会い、ぶつかり合うことで徐々に仮面が剥がれていく。策士の微笑みはいつしか、心から朱里を愛おしく思う優しい笑顔に。その変化を映し出す前田の表情に多くの女性視聴者が落ちた。前田はこの役で「第117回ザテレビジョンドラマアカデミー賞」助演男優賞の第3位に輝いている。

 2024年の東京を舞台に7人の男女が織り成す恋愛群像劇『アイのない恋人たち』(ABC・テレビ朝日系、2024)では、結婚願望は強いものの、なかなか運命の人に出会えないアラサー男・雄馬役を好演。『HiGH&LOW』や『セクシー田中さん』であれだけ多くの女性を恋に落としたのに、モテない役もなぜかハマるのが前田のすごいところである。けれど、誰よりも愛情深く、奈美(深川麻衣)に対してまっすぐ向かっていく様は微笑ましかった。

『366日』(フジテレビ系、2024)でもサブキャラクターながらインパクトを残している。前田が演じた静原は、ヒロインの明日香(広瀬アリス)が勤務する音楽教室の生徒で、フルーティストの彼女・ちなみ(鈴木絢音)といつかセッションするためにピアノの練習に励んでいる健気な男性だ。

 印象的だったのは、静原がちなみの前でピアノを披露する場面。たどたどしくも一生懸命に演奏する指先が小刻みに震えている様に、思わず見入ってしまった。役の感情を自身に染み渡らせ、台詞の言い回しや表情だけではなく、動作にまで反映させる演技は前田の真骨頂と言える。

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