夢と現実が交錯するサスペンス

『ファイト・クラブ』(1999)

『ファイト・クラブ』ロサンゼルスで行われたプレミア試写時のブラッド・ピット(1999)
『ファイト・クラブ』ロサンゼルスで行われたプレミア試写時のブラッド・ピット(1999)【Getty Images】

上映時間:139分
原題:Fight Club
製作国:アメリカ
監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:チャック・パラニューク
脚本:ジム・ウールス
キャスト:ブラッド・ピット、エドワード・ノートン、ヘレナ・ボナム=カーター、ミート・ローフ、ジャレッド・レト、デビッド・アンドリュース、ザック・グルニエ

【作品内容】

保険会社に勤めるジャック(エドワード・ノートン)は、数ヵ月来不眠症に悩まされ続けていた。

そんなある日、彼は出張で乗った飛行機の機内で、カリスマ石鹸行商人のタイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)と邂逅。「本気になれば家にあるものでどんな爆弾でも作れる」と豪語するタイラーに関心を抱く。

その後、ジャックが出張から帰宅すると、自宅では爆発事故が起こっていた…。

【注目ポイント】

『セブン』(1995)や『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008)で知られるデヴィッド・フィンチャー監督作品。原作はチャック・パラニュークの同名小説で、エドワード・ノートンやブラッド・ピットらが出演している。

2008年にイギリスの『エンパイア』誌が実施した「歴代最高の映画ランキング500」では10位にランクインするなど、一部で熱狂的な支持を受けている本作。消費社会や物質主義といった現代社会の病理に鋭く切り込んだ作品としても高い評価を受けている。

そんな本作を語る上で欠かせないのが、「映画史に残る大どんでん返し」だろう。タイラーとの出会いをきっかけに、男たちが一対一の「ファイト(喧嘩)」を行う「ファイト・クラブ」に参加したジャック。しかし、クラブの会員は、ジャックを「ダーデンさん」と呼び続ける。

そんな折、ジャックの前にタイラーが現れ、自分がジャックが生み出した理想の人物であると語り始める。そう、タイラーとは、ジャックの「オルター・エゴ(もう一つの人格)」だったのだ。

不眠症で白昼夢状態のジャックはこのことに気づいていなかったが、伏線は至る所に散りばめられていた。例えば、タイラーを交えた会話のシーンでは、ジャック自身がタイラーと会話をしていると思い込んでいることから会話が微妙に噛み合わない。

とはいえ本作、決してシリアスな作品ではない。例えば、ジャックがタイラーと喧嘩していると思い込みながら自分で自分を殴っているシーンなど、考えるだけで笑ってしまう。そういう意味で本作はブラックコメディとして見るのが正解かもしれない。

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