緊迫した追跡劇の果てに待ち受ける拍子抜け展開
『ノーカントリー』(2007)
上映時間:122分
原題:No Country for Old Men
製作国:アメリカ
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
原作:コーマック・マッカーシー
脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
キャスト:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド、ギャレット・ディラハント、テス・ハーパー
【作品内容】
1980年、テキサス州西部。ベトナム帰還兵のルウェイン・モス(ジョシュ・ブローリン)は狩りの途中、ギャング達の死体と200万ドルが残された麻薬密売車を発見する。
200万ドルを持って立ち去るモス。しかし、この出来事をきっかけに、不気味な殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)に命を狙われることになる。
そこに事件を追う保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)も加わって…。
【注目ポイント】
賞金稼ぎのモスとモスを追うシガー、そしてシガーを追う保安官ベルという三つ巴の追跡劇を描いたサイコスリラー。原作はアメリカを代表する小説家コーマック・マッカーシーの『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』で、監督を『ファーゴ』(1996)のコーエン兄弟が務める。
第80回アカデミー賞で4冠(作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞)に輝くなど、ハリウッド史上の名作として語り継がれている本作。その最大の注目ポイントは、ハビエル・バルデム演じる殺し屋シガーだろう。エキゾチックな顔立ちにおかっぱ頭という出で立ちで、空気銃を手に人々を手にかける様子には、思わず背筋が寒くなってしまう。
しかし終盤では、主人公と思われていたモスがあっけなくシガーに殺される。加えて、モスを手にかけたシガーも、仕事を終えた帰り道に交通事故に遭い、重傷を追ってしまう。無敵と思われた殺人鬼があっさりと手負になってしまう展開に、拍子抜けする観客も多いことだろう。
そしてラストは、保安官職を辞したベルが、前夜に見た夢を妻に語るというシーンで幕を閉じる。中盤の緊張感との落差に、狐につままれたような気持ちになってしまうこと間違い無いだろう。
なお、意外な展開で魅せるコーエン兄弟は、現在ホラー映画を準備しているとのこと。どのような映画になるのか楽しみだ。