ホーム » 投稿 » コラム » 日本映画 » 最も面白い三谷幸喜の脚本ドラマは? TV史に残る名作5選。凝りに凝った展開にしびれる…何度見ても楽しめる珠玉のセレクト » Page 4

三谷幸喜だからこそできた!緊張とユーモアの会話刑事劇

『古畑任三郎』

木村拓哉(2009年)
木村拓哉【Getty Images】

放送期間:1994年4月13日~2006年1月5日
放送時間:水曜21:00~21:54(※1st season)
放送局:フジテレビ系
キャスト:田村正和、西村雅彦、石井正則、小林隆、白井晃、八嶋智人、峰岸徹

【作品内容】

 警部補・古畑任三郎(田村正和)が、完全犯罪に見せかけたアリバイやトリックを、卓越した推理力と、犯人との対話で崩し、解決していく。

 初めに犯人と犯行の様子を描く「倒叙形式」を採っており、それまでの大ヒット刑事ドラマにあった、犯人捜し、アクション、銃撃戦や追跡劇がない。それでも滅法面白いという奇跡!

【注目ポイント】

 いきなり田村正和が、カメラ目線で、落語で言う「枕」を話すことからドラマが始まる。最初見たときはCMかと思ったほどのビックリ演出だった。いわばひとり芝居、ここで退屈だったらもうアウト。しかし額に手を当てて考えたり、独特の「んーッ、ンフフ(ニヤリ)」と独特の笑い声を響かせたり、1秒たりとも退屈させない田村正和、すごすぎる!

 現役の野球選手だったイチローや、コメディアンの石井正則(アリtoキリギリス)といった、異業種の方の演技の才能を開花させたのも大きな功績。オープニングの音楽(本間勇輔)もシビレルほどカッコよかった。

 神回は多い。いや、全神回と言っていいが、1作絞るとすれば、やっぱりかと言われそうな、木村拓哉の回、第2シリーズ17話「赤か、青か」だろう。木村は天神大学電子工学部の助手・林功夫を演じたのだが、震えがくるほど嫌な奴なのだ。彼が性根まで腐った悪役をしたのは、今も昔もこれ1回きりなのではなかろうか。

 ただただ自分の美意識だけで殺人を犯すという、超絶最低な犯人を演じた。そして、古畑任三郎が唯一、手を出すに至るのである(平手打ちのシーンは圧巻!)。観覧車で死の恐怖と直面する今泉巡査(西村雅彦)も含め、緊迫感がすごかった。

 このキムタク回以外も、犯人役が大スターばかりで見ごたえ抜群。現場では、田村正和も、ゲストも「絶対に自分がNGを出したくない」という気迫が漂っていたという。

 まさに戦い! 三谷幸喜だからこそできた、緊張とユーモアの会話刑事劇であり、田村正和だからこそできた、超演技名人戦であった。

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!