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トラブルが相次いだ昭和を代表する1本

『黒部の太陽』(1968)

桑畑三十郎役の三船敏郎【Getty Images】

三船敏郎【Getty Images】

上映時間:196分
監督:熊井啓
原作:木本正次
脚本:井手雅人、熊井啓
キャスト:石原裕次郎、三船敏郎、滝沢修、志村喬、佐野周二、辰巳柳太郎、玉川伊佐男、下川辰平

【作品内容】

 北アルプスのトンネル工事を焦点に、世紀の難工事と言われた黒部第四ダム建設に挑んだ男たちの姿を描く人間ドラマ。昭和の大スター三船敏郎、石原裕次郎が出演した映画史に残る大作。

【注目ポイント】

 石原裕次郎と三船敏郎。昭和を代表する俳優で、プロダクションを率いる番頭でもあったスーパースターだ。

 そんな2人が手を組んだ幻の作品がある。それが、黒部ダム建設の苦闘を描いた『黒部の太陽』だ。

 監督は、日活専属からフリーに転身した社会派監督、熊井哲。石原がトンネル掘りの指揮役でもある設計技師・岩岡を、三船が現場責任者の北川を演じている。

 石原プロモーションと三船プロダクションの共同制作となった本作は、製作当初からさまざまな問題を抱えていた。中でも最も彼らを苦しめたのが、「五社協定」だろう。

 本作が制作された1968年当時、監督や俳優は松竹や東宝といった大手映画会社に所属し、会社同士の引き抜きが許されていなかった。本作でこの協定を破った石原と三船には、映画会社からさまざまな圧力が加えられ、制作発表の段階では公開日すら決まっていなかったという。

 そして、悪いことはさらに重なる。

 制作当時、熊井は、愛知県の熊谷組工場敷地内に高さ5メートル、長さ240メートルの巨大セットを設営。その中で撮影を行っていた。

 その事故が起きたのは、420トンの水が一気に流れるという作中最大の見せ場の撮影でのことだった。撮影が1日遅れたことから、セット内に想定以上の水が溜まり、水圧で壁が一気に崩落したのだ。

 壁の穴から流れ出ていく60本の丸太と、石原、三船の両名。この光景を目の当たりにした熊井は、流石に最悪の状況が頭をよぎったという。

 しかし、幸いにも、三船は無傷で、石原も両足の打撲と左足の裂傷で済んだ。そして、撮影は石原の回復を待って再開。なんとか完成にこぎつけた。

 そして、1968年に公開されると、興収16億円の大ヒットを記録。生前石原が「こういった作品は映画館の大迫力の画面・音声で見て欲しい」との願いからビデオ化されず、長らく幻の映画となっていた(2013年、石原プロ創立50周年記念でDVDとブルーレイの発売が決定)。

 なお、流されたフィルムには、流水と石原たちが流される様子が映っており、シーンの一部としてそのまま使用している。予期せぬアクシデントが、本作にインパクトを与えたのだ。

 様々なアクシデントに見舞われながら完成した渾身の1作。迫力のある噴水シーンは特に見どころだ。

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