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雑だけど人情深い…。清々しいほどの豪快さで心揺さぶられる

『新宿野戦病院』(フジテレビ系)小池栄子

小池栄子【Getty Images】
小池栄子【Getty Images】

 宮藤官九郎脚本による『新宿野戦病院』(フジテレビ系)は、歌舞伎町の救急病院が舞台ということもあって、混沌を極める。通常、病院は命を扱う場として緊迫感が走るが、この作品においての緊迫感は一味違う。生きるか死ぬか、ではなく、もっと手前の、この病院で本当に大丈夫? という緊張が漂う。

 放送当初は、『アンメット』(カンテレ・フジテレビ系、2024)を放送していたのと同じ系列の放送局がつくっているドラマだとは思えず少々困惑した。医療現場をあれほど繊細に描写したあとで、こんななんでもアリの病院を描くなんて。もちろん、いろんなドラマがあるほうが面白いのだけれど、それにしたって。

 だが、タイトルに病院を冠しているから引っ張られていたが、この作品は医療ドラマというよりはむしろ社会風刺のドラマだ。パパ活、トー横、路上売春、生活保護、オーバーステイなど、1話の中に様々な問題を盛り込みながら展開していく。

 それをアメリカからやって来た元軍医のヨウコ(小池栄子)の視点から描いていくのが面白い。Tシャツとデニム姿で日本社会の吹き溜まりのようになった歌舞伎町に現れた無免許の医師=ヨウコは、白衣の天使とは程遠い。世界を救いもしないし、変えもしない。ただ自分のやり方で、目の前のものを捌いていくだけ。その過程で見られるヨウコの言動が、わたしたちに新しい気付きをもたらす。

 英語に岡山弁を混ぜて話し、命は救うが雑なヨウコは、もはや小池栄子以外が演じるイメージが湧かない。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合、2022)の北条政子で見せた貫禄とはかなり違うけれど、こういう肝の据わった、実は愛情深い役を演じたら、小池の右に出る者はいないのではないだろうか。

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