「サスペンスの帝王」が手掛けるアニマルパニック映画の元祖
『鳥』(1963)
――続いてご紹介頂くのは、アルフレッド・ヒッチコック監督作品『鳥』です。これはかなり意外な印象ですが、どんなところが気に入ったんでしょうか。
「繰り返しですね。何度も何度も鳥が襲ってくるという。しかも、鳥の襲撃に理由がないのがよかったですね」
――かなり不条理ですよね。
「そうなんですよ。でも、ホラーとコメディって実は紙一重で、何回も同じことを繰り返されると笑けてくるんですよね(笑)。お笑いだと、千鳥さんとかが漫才で何回も同じことを繰り返すんですが、それに通じている気がします」
――同じことを何回も繰り返しているのに、飽きずにみられるのも凄いですよね。
「そこはセンスですよね。でも、『鳥』からは、センスの良さがかなり感じられるし、あれだけしつこい反復は、やっぱり映画じゃないとできない」
――ヒッチコックは「サスペンスの帝王」と言われるくらい見せ方が上手いので、その辺はヒッチコックの面目躍如ですね。ちなみにこの作品は「モンスターパニック映画の始祖」とも言われています。
「パニック映画の最初が鳥っていうのも意外ですよね。どう考えてもサメとか犬が先だろ、っていう(笑)。ただ、『鳥』は、モンスターパニック映画の始祖であるとともに、繰り返し、ループの始祖でもあるかもしれないですね(笑)」
――ぼく脳さんご自身で漫画を描かれる際も、反復とか繰り返しは意識していますか?
「ぼくの場合は長編ではなく4コマ漫画なので、限界はありますね。やっぱり繰り返せば繰り返すほど面白いじゃないですか。『鳥』も10分だと面白くないけど、映画だからこそ面白いのかな、と思っています」
――ぼく脳さんは、過去にビートたけしの首の動きをマネしながらぶどうをつぶしてワインを作るという『たけしワイン』というパフォーマンスをされていますよね。あの作品も、ある意味では動きの反復ですね。
「『もういいて』っていう(笑)。もうたけし関係じゃないじゃん、っていうね(笑)。本当は『鳥』と同じように、2時間くらいやりたいですけどね(笑)」
――ちなみに、『鳥』の場合、鳥に目をくりぬかれるというシーンが最大のトラウマシーンと言われています。こういった絵の強さは、『RIKI-OH/力王』に通じるものがありますね。
「確かに(笑)。もしかすると、『RIKI-OH/力王』は『鳥』へのオマージュ作品なのかも(笑)」