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全お笑い芸人の憧れ? ぼく脳激推しの“究極の階段映画”

『パラサイト 半地下の家族』(2019)

©司馬宙

©司馬宙

――最後にご紹介頂くのは、『パラサイト 半地下の家族』です。これは今までのラインナップではかなり異色な感じがしましたが、どういったところに惹かれたんですか?

「これは、階段ですね」

――階段ですか!? (笑)

「はい。この作品には階段がたくさん出てくるんですが、ぼくは階段にすごく思い入れがあって。『しゃべくり007』も『M-1グランプリ』も、階段がかならず出てくるじゃないですか。だから、ぼくたち芸人は、みんな階段に思い入れがあるんですね」

――なるほど(笑)。確かに『パラサイト 半地下の家族』では、社会的身分の上昇と転落を示すモチーフとして階段が効果的に用いられていましたね。その点、天下取りを目指すお笑いの場合も同じだと。

「そうですね。あと、ぼくは現代美術家の赤瀬川原平がとても好きで、彼の提唱した『超芸術トマソン』(街中にある意味のない構造物)にとても惹かれていました。そこも、階段に惹かれる理由かもしれないですね」

――赤瀬川原平の作品には、缶詰のラベルを内側に貼ることで、缶の中と外を逆転させる《宇宙の缶詰》という作品がありますよね。最小限の手数で最大の効果を生み出すというのは、ぼく脳さんの作品に共通していると感じました。

「確かにそうですね。こういうアイデアって、実際に缶を手にしていろいろいじってると割と思い浮かぶんですが、モノがない段階で思いつけるかどうかがカギになってくると思います」

――ちなみに、渋谷のPARCO MUSEUM TOKYOで開催された「ぼく脳展」では、ランウェイをテーマとした大型インスタレーション作品も展示されていましたね。

「あれは、ランウェイを主役にするというコンセプトの作品ですね。ランウェイって言ってみればただの通り道で、どこにでもあるわけじゃないですか。なので、ランウェイかわいそうだな、と(笑)」

――ランウェイを救うというか(笑)。

「そうですね。だから、ランウェイをテーマにパフォーマンスをしようということで、あのシリーズを構想しました。場所に着目するという点では、トマソン的な発想なのかもしれません」

――『パラサイト 半地下の家族』に話を戻すと、本作はタイトル通り、「寄生」と「なりすまし」が作品全体のテーマになっています。このテーマは、今までご紹介いただいたアニマルパニック映画にも共通していますよね。

「確かに、どこかでアニマルパニック映画として見ているかもしれないですね。半地下で住んでいた家族が、夜中に裕福な家族の目を盗んで騒ぐシーンとか怖いですもんね。闇の『トイ・ストーリー』みたいで(笑)。

あと、やっぱり驚いたのは、裕福な家族になりすます俳優陣ですよね。要は、彼らは貧乏な家族になりすまして、その上で裕福な家族になりすましているわけなので」

――確かに、彼らの演技力には目を見張るものがありますよね。ちなみに、ぼく脳さんご自身も、コントやパフォーマンスで別の役柄を演じられることがあると思いますが、どのような意識で演じられていますさ。

「ぼくの場合は、まず、ぼくがぼく脳に寄生していますね(笑)。というよりも、今の時代、なりすまさずにSNSで発信をするのは、かなりリスクのいることだと思います。

ただ、一方で、なりすましている人は売れないんですよね(笑)。YouTubeでもTikTokでも、おもしろい人よりも素でメシを食ってる人の方が売れたりするので」

――やっぱり人間味がないと売れない時代なんですね。

「そうですね。だから、今の時代はユニコーンとかペガサスみたいな浮世離れした存在って生まれない気がしますね」

――そうですね。仮に、今後、密着ドキュメンタリーのオファーが来たら受けますか?

「めちゃくちゃ受けますね(笑)。めちゃくちゃボケ倒してワーワーわめきたいです」

――(笑)ぼく脳さんが『情熱大陸』に出演されたら、ぜひともチェックしたいと思います。

(文・司馬宙)

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