ホーム » 投稿 » コラム » 日本映画 » 三谷幸喜監督作品、最も面白かった映画は? 「名演技を引き出す魔法」を解説。一方、酷評された作品も…過去作をプレイバック » Page 4

映画の中にある「もう1つの映画」

香取慎吾
香取慎吾【Getty Images】

 過去8作あるうちのナンバーワンヒットは、興行収入60.8億円と、文字通り大ヒットを記録した『THE 有頂天ホテル』(2006)である。

 内容も、これでもかとスターを大人数起用し、ホテルあるあるエピソードを連発。お節料理みたいな映画で、「面白かった~!」と同時に「よく詰め込んだな~!」と感心する。

 詰め込んであるだけに、回収されるまで、話があちこちに飛び戸惑うが、その戸惑いもまた、三谷幸喜映画のおいしいスパイスの1つだ。

『THE 有頂天ホテル』と『清須会議』は、主演の役所広司が、話の散らばりに大真面目に振り回される様が素晴らしい。

 また、バランサーとして、『THE 有頂天ホテル』ではボーイ役の香取慎吾、『清須会議』では、寧役の中谷美紀が、素晴らしく機能していた。特に香取慎吾は、三谷幸喜作品では「ヘンな人達の中に混じっても冷静さを失わない常識人」をあてがわれることが多く、どれも素晴らしい。

 三谷監督の映画は、昔の名作映画がひょっこりと顔を出す。

『ザ・マジックアワー』は、「役者が別の人間を演じることで、ヒーローのような活躍をする」という設定だが、これは先に、ドラマ『合言葉は勇気』(フジテレビ系、2000)で取り入れられている。

 このドラマについてのインタビューで、三谷監督は、参考にした映画として『サボテン・ブラザーズ』(1986)と『バグズ・ライフ』(1998)を挙げ、「『サボテン〜』と『バグズ〜』にはヒーローがニセモノだというヒネリが利いています。しかもそれが最後には本物以上の力を持つというのが、なんか好きなんですね」と語っている。
※「TeLePAL」(2000年7月29日号、小学館)

 また、『ザ・マジックアワー』では市川崑監督が出演している。映画監督を演じ、劇中劇で自身の大ヒット映画『黒い十人の女』(1961)のパロディ『黒い101人の女』を撮っている。

『ステキな金縛り』では、1939年の名作法廷劇『スミス都へ行く』(1939)がカギとなる…という風に、映画の中で名作が効果的に出てくるので、作品を観終わった後、登場した名作映画を続けて観たくなる。三谷が仕掛けた、なんとも幸せな罠…なのかも?

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