絵本みたいなテンポが感じられる
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2002)
ーーーウェス・アンダーソン監督の名作ですね。
「はい。これは大学時代に、授業で取り上げられた作品なんです。宗教系の学科だったんですけど、ジェンダー論みたいな講義があって、それで、この映画についてのレポートを書くことで出会った作品です。
当時、そういった題材の『ミルク』(2009)なども観ていたんですけど、この映画は群を抜いて面白くて。突き詰めて言うと、ジェンダー問題だけでなく、人の生き死にに関してフォーカスしていたり、家族の話であったりと、多面性があるんです」
ーーー深いですね。
「あと、ウェス・アンダーソン監督の映画は作り方が絵本みたいなテンポ感があるんですよ。人形劇的とも言えるかな。セリフがなく静止しているシーンとか本当にテンポよく、無表情に会話が続いていったり。どのシーンを切り取っても面白い感じがします。あと、BGMのセンスもすごく良くて。まるで長めのMVとも感じる映画です」
ーーーそのシーンだけ観たくなることってありますが、言ってみれば「逆MV」 的な感覚ですかね。音楽の方が先行しているという。
「ああ、そんな感じです。楽曲ありきで、そのシーンを観たくなるわけです。あと、色みが鮮やかでいいですね。見ていて目が楽しいというか。だから、頭を使わないで観られるところもいいですね」
ーーー当時、芸人として他に影響を受けた作品はありますか?
「ウェス・アンダーソン監督の作品からは、かなり影響を受けています。『ライフ・アクアティック』(2005)とか芸人になってから上映された 『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)はめっちゃ好きでしたね」
ーーーウェス・アンダーソン監督の映画は、ずっと追っているのですか?
「ええ。最新作の『アステロイド・シティ』(2023)はすごくいい設定だと思いました。今までの作品とはまた違ったニュアンスの方向に向かっているのかなとも思いましたし次回作も楽しみですね」