素敵すぎるバレエシーンに恋をする
『花とアリス』(2004)
ーーー最後に、意外と言っては失礼な映画が挙がりました。
「めっちゃ好き(笑)! DVDも買いました! 岩井俊二監督作品では、『リリイ・シュシュのすべて』(2001)も好きで、それと迷いました。この映画は大学の時に初めて観たんですが、高校時代に好きだった女子が、卒業後にハワイに留学することになって、相手も僕のことを気にしてくれていると思っていたので、行ってしまう前に告白したんです。
でも、ハワイに行く日にその子が空港から電話をかけてきて、『うち、やっぱ無理だわ』って言われてしまいました。あと、その子の友人の女子が同じ学科だったんですが、その子から『●●ちゃん、彼氏できたよ』って告げられて。彼氏とベッドでピースしてる写真を見せられてしまい(笑)」
ーーーなかなかの惨劇ですね(笑)。
「本当ですよ! で、1人暮らしだったんですけど、友達もいないし、バイトだけやって、夜暇だったんですよ。そんな時に、レンタルして出会った映画です(笑)」
ーーー壮大な前振り、ありがとうございます(笑)!
「とにかく、アリス役の蒼井優さんが、めちゃくちゃ芝居が上手くて、観ているだけで元気をもらえたというか。本気で蒼井優さんと付き合いたいと思いましたもん。それで、芸人になりたいと思ったんです(笑)。それ以降、蒼井優さんの映画は全部観ていますね」
ーーー好きなシーンはありますか?
「雨の中で雨ガッパを着て踊っているシーンとか、アリスが、あるオーディションに行くんですけど、『なんかできる?』と審査員に言われて、ガムテープで紙コップを足にぐるぐる巻きつけて、バレエを踊るんですよ。パンツが見えちゃいそうなのも、『減るもんじゃない』と、気にせずにね。そのシーンが、あまりに素敵すぎて、はい(溜息)」
ーーーますます、惚れてしまったと(笑)。
「その通りです。本当にやっているのか、カット割りの妙なのかはわからないですけど、足がこう、ペタンってなっているとこから伸びて伸びてといったところがすごくリアルで。結果的に、そのシーンだけでもう非常に泣いてしまいまして。繰り返し観ましたね。でも、蒼井優さんは決して泣かそうと思いながら演技をしていたわけではないと思うんですよね。そんな粋を超えた美しさを感じました」
ーーーすごい影響力ですね。
「大げさではなく、自分もそういった感動を与える人になりたいと思えたシーンであり、とにかく蒼井優さんに恋をした作品です(笑)」
ーーーお話を聞いていて、刺身さんは、結構、ロマンチストな印象を受けました。
「そうかもしれません。昔、芸人仲間と飲んだ後に、ジャンケンで負けたやつが飲み物をごちそうするという話をしながら、自販機の前でたむろっていたんです。僕が負けたのですが、近くにいたお姉さんが『あ、負けた~!』と、いきなり話しかけてきました。その後、その子と仲良くなって恋に落ちました」
ーーーすご! まさに、映画みたいな出会いじゃないですか(笑)。
「で、後日、一緒に飲みに行った帰り道で、川の橋があったのですが、その子が欄干から上半身を乗り出して『こうしていると、浮いているみたいじゃな~い!』とか、言ってきて」
ーーーアハハ! だから、まさに、映画みたいなシチュエーションじゃないですか。
「そしたら、今度は、駐車場に寝転がって、夜空を見ながら『この星、私のものみたいじゃなーい!』って、言い始めて(笑)」
ーーーあはは! 最高ですね。で、その後、その方との恋は実ったのですか?
「いや、告白して答えはいつでも良いと言ったらいつのまにか8カ月経ってしまって、もしかして自分は告白してないんじゃないかと疑心暗鬼になって告白したっけ? と聞いたらようやく返事が返って来て結果フラれてしまいました。
でも、数年前飲み屋さんで芸人仲間と飲んでいたところ、その子が友人たち何人かで店に入って来たんです。 店員さんが席の空きがあるか確認しに行ってる間、僕の真横にその子が立っていたんです。向こうは僕に気付いてなくて僕も声をかける勇気もなくて、こっち向きに振り返れば気付いてくれるんじゃないかと思い『俺あの頃、 君と居酒屋のテレビで見てた番組全部出たんだよ! こっち見てくれ! 見てくれ!』と祈りました(笑)。
でも結局店員さんが戻って来て満席と伝えてその子は僕と逆方向に振り返って店を出て行きました。うまくいかないもんですね。すみません、映画と関係ない話で(笑)」
ーーーいえいえ、映画みたいな貴重なエピソードで締めていただき(笑)、ありがとうございました!
(取材・文/ZAKKY)
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