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圧倒的な憑依力を持つ、瀬戸康史の特異性

瀬戸康史
写真:武馬怜子

 瀬戸康史には、圧倒的な魅力がある。前述した通り、瀬戸康史とは雲。誰にも掴むことが出来ないが、誰の目にも見える。見る人間によって瀬戸康史は自由に形を変える。そういう芝居を瀬戸康史はしているのだ。

 例えば、ドラマや映画などの話をしている時に「昨日のドラマでキムタクがさ〜」と言った具合に「役名」でなく「役者の名前」で登場人物を呼ぶ人間を見たことがないだろうか。これは良くも悪くも役者自身に強烈なキャラクターがある場合に起こりやすい現象なのだが、瀬戸康史には一切それがない。

 いや、なにも瀬戸康史のキャラクターが薄いと言っているのではない。瀬戸康史ほど誰が見ても「瀬戸康史だ」と認識できる俳優もいないだろう。

 にもかかわらず、瀬戸康史の演じる人物たちは確実に瀬戸康史ではなく「透明なゆりかごの由比先生」「ルパンの娘の和馬」と役の名前を覚えることができる。そう、瀬戸康史は役者として1番大事な「憑依能力」がズバ抜けている。

 それは単純に「見た目」を変えるのではない。瀬戸康史が変化させるのは「中身」そのものだ。

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