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ドラマ『くるり』で光る新たな王子様像

瀬戸康史
写真:武馬怜子

 どの作品の瀬戸康史も、視覚情報では確実に「これは瀬戸康史だ」と認識できる。しかし、10秒後には画面の前にいる人物が瀬戸康史だと認識できなくなってしまう。しかし、瀬戸康史が演じたどの役も、絶対に瀬戸康史でなければ成立しない。

 具体例を挙げよう。2024年6月まで放送されていたドラマ『くるり〜誰が私と恋をした?〜』(TBS系、2024)を思い出してもらいたい。

記憶を失った主人公・まこと(生見愛瑠)の前に自称「元カレ」の公太郎(瀬戸康史)、自称「1番の男友だち」の朝日(神尾楓珠)、自称「一目惚れした運命の相手」(宮世琉弥)の3人が現れる。果たして誰が本当の運命の相手なのか? 恋の四角関係の行方は? という新感覚ラブコメミステリーだ。

 少しドラマに詳しい人間であれば、誰がどう考えてもまことが選ぶのは公太郎だと分かる。それほどまで完璧な王子様役を瀬戸康史は演じてきた。

 だが、ここに「瀬戸康史」という属性が乗ってくる。仮に公太郎を演じたのが瀬戸康史以外の俳優であれば、ミステリーの要素は限りなく薄くなる。

 しかし、瀬戸康史はこれまで過去ドラマで本命に好きな人を奪われる負けポジション、いわゆる「当て馬」を演じ続けてきた当て馬のプロフェッショナル、プロアテウマーだ。幼なじみ、長年付き合ってきた彼氏、婚約者、どれだけ有利な状況であろうが、一瞬で関係性を覆される。恋愛ドラマとは瀬戸康史の涙を見るためだけに存在する、と言っても過言ではない。

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