視聴者を揺さぶる、瀬戸康史の魔力
『くるり』でもそうだった。自称「元カレ」という圧倒的アドバンテージを得ているが、我々視聴者はいっさい安心することができない。
どれだけ物語が公太郎に有利に働いても、まことが公太郎にキュンときても、ここから裏切られるのでは…?プロポーズ断られるのでは…? という不安が最終回ラスト1秒まで拭うことができない。このドラマウォッチャーだからこそ起こりうる「脳みそのバグ」によって『くるり』は極上のミステリーへと仕上がっていたのだ。この感覚は、瀬戸康史の演技を見ることでしか味わうことができない。
だが、実は出演作品数と比較すると決して瀬戸康史の「当て馬率」はそれほど多くはないのをご存知だろうか。
筆者が以前調べた研究によると、これまで瀬戸康史が出演してきた恋愛要素のある作品において瀬戸康史が当て馬を演じたのは29作品中たったの「5」。(『アタシんちの男子』『マザー・ゲーム~彼女たちの階級~』『私結婚できないんじゃなくて、しないんです』『パーフェクトワールド』『私の家政婦ナギサさん』)ほとんどの作品では瀬戸康史は何かしらのハッピーエンドを迎えているのだ。
そう、これこそが瀬戸康史の恐ろしさ。演じた役それぞれのインパクトがあまりにも強すぎるゆえに私は「瀬戸康史は当て馬」だと錯覚していたのだ。私とは逆に、瀬戸康史のことを本命のプロフェッショナル、プロホンメイーと評する人間も大勢いるだろう。これが前述した「見る人間によって瀬戸康史は自由に形を変える」ということなのだ。
瀬戸康史を一度知ってしまうと、二度と抜け出すことはできない。その底知れぬ魅力に恐怖すら感じてしまう。だが、私はこれからも瀬戸康史を見続けたい。瀬戸康史 ああ瀬戸康史 瀬戸康史。
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【著者プロフィール:かんそう】
2014年から、はてなブログにてカルチャーブログ「kansou」を運営。記事数は1000超、累計5000万アクセス。読者登録数は全はてなブログ内で6位の多さを誇る。クイック・ジャパン ウェブ、リアルサウンド テックなどの媒体でライター活動を行うほか、TBSラジオで初の冠番組『かんそうの感想フリースタイル』のパーソナリティも務め、2024年5月に初書籍『書けないんじゃない、考えてないだけ。』を出版した。
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