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許可なしで撮影を敢行した挙句に起きた悲劇

『ミッドナイト・ライダー』

ウィリアム・ハート

ウィリアム・ハート【Getty Images】

監督:ランドール・ミラー
脚本:ランドール・ミラー、ジョディ・サビン
出演:ウィリアム・ハート、タイソン・リッター、ゾーイ・ドゥイッチ、エリザ・ドゥシュク、ワイアット・ラッセル

【作品内容】

 歌手グレッグ・オールマンの自伝『My Cross to Bear』に基づいた映画として企画されたが、製作中止となった。

【注目ポイント】

 無許可の鉄道橋で撮影を強行し、死者と怪我人を出したことで監督ら3人が逮捕され、製作中止を余儀なくされた映画『ミッドナイト・ライダー(原題)』は映画史上に残る「呪われた映画」と言っていいだろう。

 作品の基になったのは、ロックバンド、オールマン・ブラザーズ・バンドのグレッグ・オールマンの自伝本。監督は『プロフェッサー』(2007)などのランドール・ミラーが担当した。事故が起きたのは2014年2月、鉄道橋を舞台にした夢のシーンの撮影においてだ。

 橋の上には病院のベッドがセットされ、さらにベッドの上には主演のウィリアム・ハートが寝ている状態だった。列車が接近してくるなかでベッドを取り外す流れだったが作業は失敗、列車はベッドに衝突したのだ。事前に危険を感じたハートは無事だったが、カメラアシスタントのサラ・ジョーンズが列車にはねられ死亡。他にもスタッフら7人が怪我を負った。事故の後、ウィリアム・ハートは降板を発表。映画は日の目をみることはなかった。
 
 しかし、なぜこれほど悲惨な事故が起こったのか。撮影は鉄道会社の反対にも関わらず強行され、キャストやスタッフたちには安全面が万全ではないことが知らされていなかったのだった。

 同年7月に、ミラー監督とプロデューサー2人は過失致死容疑と不法侵入容疑で起訴され、監督には実刑2年執行猶予8年、さらに罰金2万ドルが言い渡された。撮影中の死亡事故で監督に実刑判決が下ったのは本作が史上初めてである。

(文・阿部早苗)

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