観ていて辛くなる…なぜ有村架純は不幸な役ばかりを演じるのか? 受け継がれる“薄幸女優”の系譜。背景にいるキーマンとは?
ドラマ『海のはじまり』が9月23日に最終回を迎える。同作で主人公・夏(目黒蓮)の恋人・百瀬弥生を演じる有村架純は、近年、過酷な状況に追いやられ、心身ともに疲弊する、“しんどい役”を任されることが多い。そこで今回は、有村を代々続く“薄幸女優”の系譜に位置づけ、役者としての魅力を紐解いていく。(文・小林久乃)
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【著者プロフィール:小林久乃】
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。最新情報はこちら
木村多江、吉田羊…受け継がれる“薄幸女優”の系譜
日本では以前から“薄幸女優”という括りがある。代表的な女優といえば、木村多江や吉田羊。いわゆるくっきりとした目鼻立ち……というよりは、すっきりとした顔立ちの和風美女。演じる役も「わ〜、この人、幸(さち)薄そう〜」という雰囲気作りに一役買っているけれど、先述のふたりは見た目も含めて、存在そのものが“薄幸女優”というのが特徴だ。将来はおそらく田中裕子という、大先輩の道が待っている。
群雄割拠の芸能界において「不幸そうな役をやらせたら、この人」と白羽の矢が立つのはけして悪いことではない。むしろ、おいしい。木村多江本人もインタビューで「薄幸の役は木村多江しかいないと言っていただけるのは、役者冥利に尽きます」(夕刊フジ/2009年11月)と、話している。
ただこの気流に少し変化の兆しが見えている。薄幸……いや現代風に言うのなら“しんどい”なのだろうか。不幸そうな役を演じさせると、キラリと光る女優が有村架純だ。現在放送中の『海のはじまり』(フジテレビ系)で演じる、百瀬弥生役をはじめ、近年、彼女が演じる役は設定だけでも、しんどい。それでも役柄にすっぽりとハマっている。
彼女の顔立ちは目鼻立ちのくっきりとしたタイプ。木村多江らとは真逆の雰囲気の平成生まれ。令和の芸能界に薄幸女優・ニューウエーブとして、燦然と存在感を放つ有村架純はなぜ、しんどい役なのに輝くのか。