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主人公の波乱に満ちた人生を包み込むメロディ

『イル・ポスティーノ』(1994)

映画『イル・ポスティーノ』
映画『イル・ポスティーノ』【Getty Images】

監督:マイケル・ラドフォード
脚本:マイケル・ラドフォード
出演者:マッシモ・トロイージ、フィリップ・ノワレ

【作品内容】

 南イタリア・ナポリ沖合の小さな島。この島に住む内気な青年マリオ(マッシモ・トロイージ)は、文字が読めることから郵便配達人に採用されることになった。

 彼の届け先は、チリから亡命してきた世界的な詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)だけだったが、ネルーダと交流するうちに、マリオは文学や芸術に目覚めはじめる。

【注目ポイント】

 祖国チリを追われた実在の詩人パブロ・ネルーダの自叙伝を基に制作された『イル・ポスティーノ』。本作は、1994年のアカデミー賞で5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、オリジナル音楽賞)にノミネートされ、結果的にルイス・バカロフの音楽にオスカーが贈られた。

 そんな珠玉の楽曲群の中でも、特に胸に沁みるのは、テーマ曲の「IL POSTINO」だろう。イタリア映画らしい優美ながら素朴なメロディは、決してドラマティックとは言い難い。しかし、物語に寄り添い、観る者の心に、確実に何かを残す。

 そんな本曲、まるでマリオ自身の人生のテーマであるかのごとく、物語の折々で用いられている。例えば、マリオが詩と出会い創作の喜びに満ち溢れたとき。そして、デモ集会に参加し、命を散らすとき―。人生の明暗を照らしだすこの曲は、まさにマリオの人生そのものなのだ。

 また、主演のマッシモは元々心臓が悪く、撮影中も日に日に衰弱。本作の撮了のわずか12時間後に41歳の若さで逝去している。マッシモがスタッフたちに遺した最後の言葉は、「今度は僕の最高のものをあげるからね」だったという。

 デモに命を懸けたマリオと、映画制作に命を燃やしたマッシモ。2人の人生が交錯するように思えるのは、筆者だけではないはずだ。

 なお、本作は、公開30周年とパブロ・ネルーダの生誕120年を記念し、4Kデジタルリマスター版として劇場でリバイバル上映される予定。新たな技術で蘇った本作に期待したいところだ。

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