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「瀬々敬久監督は映画に愛された人」
名匠との思い出を語る

写真新井章大

―――2004年には瀬々敬久監督の『ユダ』にも出演されていますね。

「映画美学校の学生さんやOBが現場に参加している、低予算映画でした。助監督には、現在では映画監督として活躍している菊地健雄さんもいらっしゃいました。一週間ほどの超早撮りだったので、スタッフ皆、ほぼ不眠不休の状態で撮った作品ですね」

―――2022年の12月に公開された最新作『ラーゲリより愛を込めて』を含め、瀬々監督の作品にも数多く出演されていますね。瀬々監督は『ユダ』のような低予算の映画から『ラーゲリ』のような大作まで幅広く手掛けていますが、その両方に出演している三浦さんの目から見て、演出に違いはありますか?

「どちらの現場でも、ワンショットに尋常じゃないほどのエネルギーを注ぐという点で、瀬々監督はそんなに変わらないですよ。『ラーゲリより愛を込めて』では、日本人捕虜たちが山の中で労働をするシーンがあるのですが、フレームを覗いた瀬々監督は、芝居が行われている遥か背景の山にも人を配置したいと提案していました。結局、都合がつかず実現しませんでしたが、瀬々さんの映像へのこだわりは尋常じゃないものがありますね」

―――瀬々監督の映画は元々ご覧になっていたんですか?

「はい。川瀬陽太さんが出演しているピンク映画『END OF THE WORLD』(1995)などを観ると、映画の神に愛された人なんだろうなと思います。人里離れた島でロケ撮影をしているのですが、野原で濡れ場を撮っているんですよ。それも大胆なロングショットを駆使して。その場で撮れるベストの映像を常に探求している監督だと思います。お芝居の演出にも同じことが言えますね」

―――なるほど。

「『ユダ』には身体は女性、心は男性の”ユダ”が登場するんですが、演じられたのも同じ境遇の方で。難しい役柄でしたが、現場で瀬々さんは心に刺さるような言葉を投げかけて、役と向き合うように発破をかけていましたね。その熱量たるや凄いですよ。撮影時期は真冬だったんですけど、Tシャツ姿になって汗びっしょりで演出していましたから。若くしてこんなにエネルギッシュな現場を経験できたことは、僕にとって大きな財産でした。『ユダ』のカメラを担当しているのは、斉藤幸一さん。瀬々監督とずっとタッグを組んでいらっしゃる方なんですけど、休憩中にカメラを回すんですよ。『撮ってます?』って訊いたら、『なんか使えるかもしれないから』と。予算がない中でも、とにかく映画のために常に面白いアイデアを求めているようなスタッフさんがいて、刺激的な現場でしたね」

―――三浦さんにとって瀬々監督はどのような存在ですか?

「そうですね…。瀬々さんに『お前つまらない芝居してんじゃねえよ』って言われないようにしようとはずっと思っていますね。自分にとっては先生のような人です」

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