芸人時代の先輩・木村祐一
監督作品で放った存在感
―――2005年に所属事務所を吉本興業からディケイドに移され、役者としての活動が本格的にスタートします。
「この時期くらいから、現場で思いついたアイデアや、役に関する考えを監督とディスカッションして、あーでもないこーでもないと試行錯誤しながら、『演技って何なんやろう』って考え始めた気がします。そういう意味で言うと、演技に関しては完全に独学です」
―――この時期に日本映画を意識してご覧になったそうですね。
「そうですね。映画界の流派と言ったらいいのか、『この監督の助監督がこの人で、それが監督になってこういう作品を撮って』とか、往年の日本映画では顕著にあった、日活、松竹、東映とか、各映画会社の特徴とか、それまで全く知らなかったので、まずそれを知ることから始めましたね。あとは、次ご一緒する監督やカメラマンの過去作を観て、脚本と照らし合わせてどういう芝居のリズムになるのか、どんな画になるのだろうかとか、事前に頭に叩き込んで」
――― 一緒に仕事をする監督の作品をチェックする役者さんは多いと思うのですけど、カメラマンの過去作までしっかり見る方は少ないのではないですか?
「それぐらいしないとアカンな、と思っていたのと、その作業が純粋に楽しかったんですよね。その過程で阪本順治監督や崔洋一監督の過去作を観て、強烈なインパクトを受けました」
―――2009年には木村祐一監督の初監督作品『ニセ札』に出演し、重要な役柄を演じていますね。
「木村さんは芸人時代からの先輩で、以前から親しくさせていただいていたのもあり、呼んでいただきました。僕が演じたのは、太平洋戦争の帰還兵で、偽札作りに手を染める男。軍隊時代のクセが抜け切れていない役柄でしたが、1ミリもスキをつくるまいと全身全霊で撮影に臨みましたね」
―――『ニセ札』は、向井康介さん、井土紀州さんと日本を代表するシナリオライターが脚本を担当していますね。三浦さんは後に、井土さんが監督した『彼女について知ることのすべて』(2012)でメインキャストを演じています。
「井土さんとは『ニセ札』の打ち上げで初めてお話をしました。井土さんがシナリオを手がけた瀬々監督作品が大好きだったのもあり、『もし映画を撮る機会があれば是非声を掛けてください』と伝えました。自分をちょっと売り込んでいたのかな。脚本の話とかもさせていただきましたね」