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豊作だった夏ドラマ…最も面白かった作品は? 振り返り座談会(2)識者が唸った『西園寺さんは家事をしない』の新しさとは?

text by 編集部

2024年夏期ドラマを振り返るドラマ座談会を開催。『海のはじまり』や『西園寺さんは家事をしない』など注目度の高い作品を中心に、3名のドラマライターがそれぞれの魅力を深掘りし、共感ポイントや俳優、脚本の魅力に迫る。ドラマファン必見の座談会レポートをお届け。今回は第2回。(文・編集部)

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【出席者プロフィール:苫とり子】

1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

【出席者プロフィール:あまのさき】

アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

【出席者プロフィール:まっつ】

1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

「家事が嫌いな女性の家が荒れ放題じゃないことに感動した」
『西園寺さんは家事をしない』松本若菜が提示した、新たなロールモデル

『西園寺さんは家事をしない』 【番組公式Instagramより】
『西園寺さんは家事をしない』 【番組公式Instagramより】

―――夏期はステップファミリー作品が多かったというお話もありましたが、『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)はその代表格です。この作品の特筆すべきところを語っていただけますか。

苫「女性の働き方と家事の両立をテーマにした作品が近年は多いです。本作の脚本を執筆された山下すばるさんが、以前ご担当された『私の家政夫ナギサさん』(2020、TBS系)からさらにブラッシュアップされている印象でした。

『西園寺さんは家事をしない』では、西園寺さん(松本若菜)が、『私はやらなくてもいいことを、やらなくてもいいようにするのが私のやりたいこと』と最初に言っていたのが印象的だったんですが、この作品は、最終的に『やりたくないことをやらないようにする』ではなく、『みんながやりたいことをどうやってできるようにするか』に着地した。

女性のキャリアを描く上で、「女性が働いて、男性が家事をすればいいじゃん」という単純な解を導き出すのではなく、両方が働いている状況で、どうやって互いに歩み寄っていくかを描いた点が、とても良かったです」

あまの「家事が嫌いな女性主人公の家が荒れ放題じゃないことに、干物女という従来のイメージになっていたかったことが、まずうれしかったです。また、苫さんと重複しますが、やりたくないことを得意な人に任せる、という着地にしなかったことも、既存の作品からのアップデートを感じました」

―――キャストについてはいかがですか?

まっつ「僕が特に気になったのは松村北斗さんです。映画『夜明けのすべて』(2024)で松村さんの抜群な芝居に胸を打たれて以来、推しになってしまったんですが、お2人からみて、『西園寺さんは家事をしない』の松村さんはいかがでした?」

あまの「倉田瑛茉さんと本当の親子のように自然で、とても良かったです。あれほどの距離感を構築できるなんて、現場での立ち居振る舞いが、とてもお上手なのだろうなと思います」

苫「松村さん演じる楠見くんが感情をあまり見せないキャラに見えて、不器用ながらも温かみを感じさせる演技がとても上手でした」

あまの「キャストに関して言えば、松本若菜さんが注目されるようになったことが、個人的にとても嬉しいです。『仮面ライダー電王』(2007、テレビ朝日系)の頃から好きな女優さんだったのですが、その後、映画でもちょい役が多かった時期が続きました。それが『やんごとなき一族』(2022、フジテレビ系)で一気に認知度が高まり、今作でついに主演も務めました。コメディエンヌとして開花したことは、本当に嬉しいことです」

苫「松本さんの頼もしさと可愛さのバランスが絶妙でしたね。松本さんの現場での評判もとても良いと聞きますし、彼女の人柄がキャラクターにも反映されて、松本さんだからこそ、ここまで愛されるキャラクターになったのは間違いないです」

あまの「女性の新しいロールモデルが提示された気がします。女性から見た30代後半以上の仕事ができる女性って、天海祐希さんのような、きりっとした女性像に固定されがちですが、その固定概念を切り崩してくれたと感じています。ドラマとして、あえて惜しい点をあげるとすれば、職場のキャラクターたちがとても濃くて魅力的だったので、もう少し彼らを深掘りして欲しかったかも」

(文・編集部)

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