人間の複雑さを体現する
古川琴音演じる芽衣子の物語は続き、つぐみがタクシーを降りた後、芽衣子はある場所へ向かった。素直で奔放的な印象の芽衣子だったが、次第に本人自身も認めがたい感情や欲望と行動との矛盾が垣間見えるようになる。
芽衣子は我儘で勝手で自己中だが、それは強烈な寂しさや孤独の裏返し“かもしれない”。相手を見下し試している自分を俯瞰しては、負い目を感じている“かもしれない”。
芽衣子自身という人間をカテゴライズすることなく、不確かな認識が数多く介在する存在として、ありのままを演じている。そんな姿に私自身の表裏一体な部分を認めてもらったような安心感を抱く。と同時に、一種のざわめきに触れたような思いもした。
古川琴音のもうひとつの魅力。それは、人間とは多面的であることを思い出させてくれるところだと私は思う。