『リング』『呪怨』に匹敵する怖さ?
2010年代を代表する”正統派Jホラー”
『恋の記憶、止まらないで』(2019/主演・斉藤由貴)
放送日:2019年11月9日(2019年秋の特別編)
演出:岩田和行
脚本:諸橋隼人
出演:斉藤由貴、利重剛、イチキ游子
【作品内容】
落ち目のシンガーソングライター、村瀬志保は、焦りを感じていた。レストランで歌っても客は耳を傾けないし、SNSにも冷たい言葉が並んでいる。そんなある日、夢に出てきた歌が気になった彼女は、自身の記憶を辿りながら新曲を作り始める。
後日、志保がその曲をレストランで歌ったところ、客たちは皆彼女の歌に聞き入った。さらに、配信ランキングでは4位にランクインし久しぶりの大ヒットに至った。
そんなある夜。志保は子どもの頃に出場した「津軽ちびっこのど自慢大会」のビデオを観る。すると、作中に登場する地元ローカルのCMで、彼女が作った歌とそっくりの歌が流れ始める。志保は無意識のうちに他人の曲を盗作してしまったのだ。
早速、志保がCMの企業を検索すると、「最恐都市伝説」というサイトがヒットする。そこには、CMに出演していた歌手が突然亡くなり、CMが1回のみの放送で中止になった旨が書かれていた。志保が盗作したのは、「呪いのCMソング」だったのだ。
【注目ポイント】
本作は、2019年11月9日に放送された「秋の特別編」の中の一編。公開当初からSNSを中心に「怖すぎる」と大きな話題を呼んだ。
本作の最大の特徴は、本作が『女優霊』(1996)や『リング』(1997)といった往年のJホラーの流れをしっかりと汲んでいる点だろう。例えば、作中には、『リング』よろしくビデオテープが登場するほか、CM中の歌手・宮島素子(イチキ游子)は、長髪で白い服に身を包んでおり、いかにも貞子然とした出で立ちをしている。
また、「抑圧された記憶の反復」や「1回しか流れなかった謎のCM」、そして、「真偽不明の都市伝説」など、近年ネットをざわつかせているテーマを取り込んでいる点もポイントが高い。2010年代以降、Jホラー的表現が陳腐化し迷走している中、”最恐”の作品がテレビから出てきたという事実は実に興味深い。
なお、本作は、モノづくりに携わる人にとっては二重に恐ろしい作品になっている。それは、本作が、「無意識の盗用」をテーマとした作品だからだ。相手が幽霊でも人間でも盗用はしてはいけない。モノづくりに携わる人間は、全員が肝に銘じたいところだ。