『言の葉の庭』(2013)
孝雄:水上恒司 / 百香里:橋本愛
【作品内容】
靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の日は学校をサボッて日本庭園で靴のデザインの考えるのが定番だった。そんなある日、タカオはひとりで缶ビールを飲んでいる女性ユキノと出会う。
約束はしなかったが、自然と雨の日はふたりが会う日に。居場所を失ってしまったというユキノに、やがてタカオは靴を作ってあげたい、と思うようになる…。
【注目ポイント】
2023年に舞台化もされている『言の葉の庭』。46分という小品ながら、新海誠のエッセンスが凝縮された珠玉の一本として、アニメファンから愛されている。ちなみに舞台版では、岡宮来夢と谷村美月が主人公とヒロインを演じていた。
タカオのように実直で、年上の女性にひたむきに想いを傾ける…というと自然と水上恒司の顔が浮かんでしまうのは、ドラマ『中学聖日記』(2018、TBS系)の影響だろうか。
タカオが靴職人志望というのも水上のイメージにピタリとハマる。今、不器用な男を演じさせたら、水上恒司の右に出る者はいない。その点、口下手で実直な性格のタカオを演じるにはピッタリだ。
ヒロイン・ユキノのキャスティングも悩ましいところだが、謎めいた女性を演じさせたら天下一品の橋本愛に任せてみたい。『あまちゃん』(2013、NHK)や『新宿野戦病院』(2024、フジテレビ系)といった宮藤官九郎脚本作品では、コメディエンヌとしての実力も遺憾無く発揮している橋本だが、影のある役が似合う女優でもある。
強気ではあるが、実は誰にも触れられたくないような弱みを抱えており、自分の事情に大切な人を巻き込みたくない…そんな優しさの持ち主でもあるユキノ。橋本なら複雑な心情を繊細な演技で表現してくれるだろう。
ネックは年齢差だ。高校生のタカオに対して、ユキノは27歳。一方で、1996年生まれの橋本と1999年生まれの水上は年が3つしか離れていない。しかし、橋本であれば、危うさと余裕を併せ持った大人の女性を見事に演じ、物語に説得力を持たせてくれるに違いない。
(文・ふくだりょうこ)
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【了】