鬱屈した魂の暴力性に火をつけた問題作
『ファイト・クラブ』(1999)
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:ジム・ウールス
原作:チャック・パラニューク
出演:エドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム=カーター、ミート・ローフ、ジャレッド・レト
【作品内容】
不眠症に悩んでいた主人公は、石鹼売りをしているタイラーとの出会いをきっかけに殴り合いで満たされていく。やがて主人公とタイラーは地下に「ファイト・クラブ」を立ち上げるとスリルを求めた男たちが集まってくる。
【注目ポイント】
チャック・パラニュークの同名小説を原作に、監督は『セブン』(1996)などで知られる鬼才デヴィッド・フィンチャーがメガホンを取ったサスペンススリラー。
フィンチャー監督の魅力が詰まっていると言っても過言ではない本作は、人々が物質的な価値に依存する現代社会の空虚さを浮き彫りにし、資本主義に対する鋭い批判、そして主人公が日常生活への不満から解放されるかのように、タイラーと共に暴力的な地下活動を行う展開は自己破壊の表れであり、物質主義に対する反発を象徴している。
また、エドワード・ノートンとブラット・ピットといった役にハマるキャスティングも魅力のひとつであり、どんでん返しを迎える衝撃的な結末は観る者に強烈な印象を与える。
自動車会社に勤務する主人公(エドワード・ノートン)は、虚無感から不眠症に悩まされていた。自己啓発グループに参加していた彼は、やがてカリスマ的なタイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)と出会う。タイラーは彼に既存の社会規範に反抗する勇気を与え、口外禁止の地下格闘クラブ「ファイト・クラブ」へと誘う。しかし、
クラブは次第に過激で反社会的な行動へと発展していく。
この映画に触発された事件が発生したのは2009年のマンハッタン。スターバックスで17歳のカイル・ショーが爆発物を仕掛けた事件だ。彼は本作の熱狂的なファンだった。幸いにも爆発は未遂に終わり、ショーは逮捕された。彼が企業への攻撃を試みたのは、映画のメッセージを誤解した結果と言えるだろう。
他にも2013年、ニュージャージー州ライトブリッジ・アカデミーの先生エリカ・ケニーとチャニーズ・ホワイトは「ファイトクラブ」スタイルで4才~6才の少年少女に乱闘を煽ったことにより刑事告発されている。検察は映像によって子供たちが殴り合おうとしたり、地面に互いを押し付け合ったりする姿を確認したという。
映画『ファイトクラブ』は、社会に馴染めず鬱憤を溜めている人々を刺激する劇薬のような側面を持っている。それは映画の魅力と切っても切り離せないことは言うまでもないだろう。