石原さとみの吸収力とは
『リッチマン、プアウーマン』からわずか2年後、2014年。あの伝説のドラマが放映される。いまだに石原さとみファンの脳髄に刻み込まれている『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)だ。
松本潤演じる主人公・小動爽太に対し、思わせぶりな態度で惑わしながらも本心は決して見せることがない、キュートかつミステリアスな女性・高橋紗絵子を演じ、全視聴者を沼のドン底に落とした。
当時のインタビューにて、紗絵子というキャラクターについて聞かれたインタビューで石原さとみは「小悪魔系と言われて、まるで計算しているかのように思われるかもしれないけれど、マイペースで、自分に正直なんだと思います」と語っていた。
ただ、「あざとい」だけではない。脳がクラクラするほどの官能的なシーンの裏で描かれる、紗絵子の「陰」の部分。そのギャップを理解し、完璧に演じているからこそ、視聴者は甘いシーンはより甘く、苦いシーンはより苦く感じることができるのだ。
石原さとみはキャラクターの「吸収力」「理解力」が尋常ではない。この作品を境に石原さとみの魅力が一段も二段も増していく。
それからわずか半年後に松下奈緒とダブル主演を務めたドラマ『ディア・シスター』(フジテレビ系、2014)では男にだらしなく、一度の過ちで妊娠してしまう女性・深沢美咲を演じた。
『失恋ショコラティエ』の紗絵子が持つ「小悪魔」の部分をさらに増幅させ、その「あざとさ」を自覚的に操ることができる、まさに「リーサル・ウェポン」と言わんばかりのかわいさに私の心はグチャグチャされた。
しかし、その裏では大きな問題を抱えており、それが明るみに出る後半では石原さとみの演技の幅に、最後は涙腺をグチャグチャにされてしまった。