石原さとみの尋常ではない役作り
そして2024年、ここまでの石原さとみの歴史を全て覆してしまう衝撃作、映画『ミッシング』が公開された。
ある日突然、娘が行方不明になり生活の全てが一変してしまった母親・沙織里。いつまで経っても捜索が進展せず苛立つ姿や、世間の誹謗中傷に傷つき憔悴していくそのサマは、思わず目を覆いたくなるほどだった。
『失恋ショコラティエ』や『ディア・シスター』の石原さとみと見比べるとその差に吐いてしまいそうになる。
石原さとみは、簡単な言葉で言うところの「憑依型俳優」ではないと思っていた。どんなにタイプの違う役を演じていても、その奥底には良い意味で「石原さとみ」を感じることができるし、それが彼女の大きな魅力だと。
しかし、この『ミッシング』に限っては、少し手も油断すれば「これ誰…?」と思ってしまうほど「石原さとみ」の部分がほぼ感じられず、映画というより、もはや「ドキュメンタリー」を観ているような感覚に近かったのだ。
それくらい完全に石原さとみと沙織里という役が「同化」していたのだ。画面に映る沙織里の髪や肌や唇の荒れ方を見れば、どれだけの覚悟を持って石原さとみがこの作品と向き合っているのかが、痛いほど分かってしまう。
この作品を経て、石原さとみがこれからどんな役を演じるのか、楽しみと恐怖で震えが止まらない。そして、私はこれから「すき家」のCMでうまそうに牛丼をほおばる石原さとみのことを、どんな目で見ればいいのだろうか。誰か教えてほしい。
(文・かんそう)
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