『放課後カルテ』における演技の魅力は?
2024年に入ってからも、『9ボーダー』(TBS系)や大河ドラマ『光る君へ』(NHK)など話題作に出演している松下は、10月期の新土曜ドラマ『放課後カルテ』(日本テレビ系)では地上波単独初主演となる。
松下演じる学校医の牧野峻は「常に無愛想で、児童からは怖がられ、文句ばかりで教師からも不評」というキャラクターで、見るからにいい人オーラをまとう素の松下とのギャップは小さくない。また、牧野には児童の小さなサインも見逃さないという資質もあり、ただツンケンしているわけではないため、表現するのが難しそうな役柄だ。
だが、ドラマが始まると、そうした考えが杞憂に終わっていたことがすぐにわかる。
「保健室にはなるべく来ないでもらいたい」と子供たちに言い放つなどぶっきらぼうに見える瞬間は数多いが、それは仕事に対して不真面目であることを意味しない。医師として子供たちとちゃんと向き合い、小学生相手であっても1人の人間として尊重していることが、松下演じる牧野の瞳からはしっかりと伝わってきた。
松下は複数の要素を1つに組み込んでいく作業が得意なように思う。彼自身がピュアで、余計な色を持たない“透明俳優”だからなのか、相反するように見えるファクターも1人のキャラクターに容易に落とし込んでしまう。
だから、我々視聴者はその人間の生の熱に反応し、まるで本当にこの世界にいるようなリアリティを感じることができるのだろう。
牧野は一見松下とは結びつかないイメージだ。それでも、松下が不器用な優しさを“問題ドクター”の中で巧みに表現しており、すでに牧野というキャラクターに魅了され始めている。『放課後カルテ』を経て松下は俳優としてさらにもう1歩先へ進むことになるだろう。
(文・まっつ)
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