高度な技術に裏打ちされた伸びやかな声
稲垣吾郎(新しい地図)
―――続いては、元SMAPのメンバーで、現在は「新しい地図」で活躍されている稲垣吾郎さんです。
「稲垣さんも、同じく『新しい地図』の草彅剛さんと迷いました。ただ稲垣さんの場合、そこまで表情が動いていないのにとても聞きやすいんですよね。
しかも、声のトーンが割と高いのに全くキンキンしていなくて、とても落ち着いている。高度な技術をお持ちの方とお見受けしました」
―――稲垣さんはSMAP時代はどこかミステリアスな印象がありましたが、「新しい地図」結成後は演技の幅が一気に広がった印象があります。
「もしかするとこれまでの稲垣さんはミステリアスなキャラクターを演じていたのかもしれないですね。で、独立してからは、自然体でのびのび演技に打ち込めるようになった。と考えると、今が一番いい状態ですね」
―――三浦さんは、これまで、芸能界入りを目指す子どもたちの指導もたくさんされてきたと思いますが、事務所の意向で役が狭まってしまうという例はあるのでしょうか。
「正直ありますね。声質的に知的なキャラクターが似合うのに天然キャラを要求されたり、バラードの方が似合うのにポップソングを要求されたり。
基本的に、皆さん役に合わせようと無理をして頑張るんですが、ギャップに耐え切れずに辞めてしまうお子さんも中にはいましたね」
―――ちなみに、ボイストレーニングをする際に、事務所からオーダーがある場合もあるのでしょうか。
「ありますね。ただ、その場合は、本人の意向と事務所の意向の共通項をさぐりながら、なんとか落としどころを見つけるようにがんばります。
ただ、完全に一致することはなかなかないので、やはりお子さんの負担になってしまう場合が多いですね」
―――なるほど、稲垣さんは紆余曲折の中で自分なりの演技を見つけられたのかもしれませんね。ちなみに、稲垣さんのように落ち着いた声を出すには、どのようなボイストレーニングを積めばいいのでしょうか。
「それこそ、戦場カメラマンの渡部陽一さんの話し方のように、低音で一音一音ゆっくり話すしかないですね(笑)。
やっぱり人間って、自分の引き出しにない話し方ってできないんですよ。なので、稲垣さんのような話し方を体得するには、普段からゆっくり話すように心掛けることが重要です」