1作だけで終了…? 続きが気になる漫画実写化映画5選。ヒットしたのに続編がないコミック原作の邦画をセレクト
漫画原作の映画の勢いが止まらない。近年における国内の興行収入ランキングをみればそれは明らかだろう。また、続編ものが多いのも漫画実写化映画の特徴である。しかし中には、ヒットしたにもかかわらず、続編が制作されなかった作品も。今回は、観客のラブコールも虚しく、続編が製作されていない漫画実写化作品を紹介する。(文・ZAKKY)
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映画版のストーリーはこれで完結?
『BECK』(2010年)
監督:堤幸彦
脚本:大石哲也
原作:ハロルド作石『BECK』
出演:水嶋ヒロ、佐藤健、桐谷健太、忽那汐里、中村蒼、向井理、カンニング竹山、倉内沙莉、水上剣星、古川雄大、桜田通、川野直輝、竹中直人、桂南光、有吉弘行、品川祐、蝶野正洋、もたいまさこ、サンキ・リー、松下由樹、中村獅童
【作品内容】
秀でたボーカルの才能を持つ、高校生の田中幸雄ことコユキ(佐藤健)は、ニューヨーク帰りの天才ギタリスト南竜介(水嶋ヒロ)と出会い、千葉(桐谷健太)と平(向井理)とサク(中村蒼)とともに「BECK」というバンドを結成する。そんなある日、国内最大級のロックフェス「グレイトフル・サウンド」への出演依頼がきて…。
【注目ポイント】
ハロルド作石による漫画『BECK』(1999~2008)が原作。10代の若者たちがバンド・BECKを組み、伸し上がって行く様を描いた青春活劇だ。
バンドのギタリストである南竜介(水嶋ヒロ)は、アメリカ在住時は不良少年であり、車上荒らしをしていた。そんな中、竜介は、全米の音楽界を牛耳るギャングのボスであるレオン・サイクス(サンキ・リー)の車の中にあった「ルシール」というギターを盗み出す。これが物語の起点となる。
「音楽業界のドンがギャングのボス」などという設定は現実離れしており、原作からの微妙な改変点に関するツッコミどころは少なくないのだが、それらはおしなべて本作の高いクオリティの前では些細な瑕疵にすぎない。
映画『BECK』は、音楽表現あり、アドベンチャー要素ありの見応えのあるエンターテインメント作品に仕上がっており、国内興行収入17.6億円と、興行的にも成功を収めた。
さて、そんな本作がヒットした要因は、ずばりバンド・BECKのキャスティングが完璧だった。この一言に尽きる。
ヴォーカル&ギターの“コユキ”こと田中幸雄(佐藤健)、ギターの南竜介(水嶋ヒロ)、“チバ”こと千葉恒美(桐谷健太)、ドラムの桜井裕志(中村蒼)、ベースの平義行(向井理)といった当時も今もときめく鉄壁のキャスティングとメインビジュアルが公開された際は、原作ファンから「イメージにぴったり!」という歓喜と期待の声が上がり、公開後の評判も上々だった。
映画版では、とりわけ千葉恒美役の桐谷健太の芝居が光った。“チバ”は「コユキの歌声の凄さに圧倒される」キャラクターでありながら、桐谷のラップパフォーマンスの圧倒的な素晴らしさによって、コユキの引き立て役に甘んじない、一本筋の通ったキャラクターとして成立していた。筆者個人の感想にはなるが、“チバ”の造形に関しては原作を超えていると言う他ない。本作を観た後に原作を読み、チバの魅力がイマイチ薄いと感じた方も少なくなかったのではないだろうか。
音楽映画の快作であるこの作品、なぜ続編が作られないのか?
原作では、映画版で描かれたエピソードの後、BECK一行はアメリカに旅立ち『海外編』が始まる。そう、これが、問題だったのではないか。全編海外ロケとなると製作費は前作とは比べ物にならないくらいかさむだろうし、海外で日本人バンドが活躍する様を、実写で説得力豊かに描くのは、言うは易し、行うは難し。ハードルは非常に高い。
加えて続編製作のネックになったと思われるのは、誰もが一聴すれば驚愕する「天性の歌声」の持ち主・コユキの歌唱をどのように描くのか、という問題だ。もちろんこの問題は1作目の製作が発表された当時から原作ファンの間で話題になっていたのだが、メガホンをとった堤幸彦をはじめとした制作陣は「コユキの声を聴かせない」という聡明なアイデアで見事に難局を乗り切ったのだった。
原作では海外の聴衆たちも魅了するコユキの歌声であるが、もし続編が製作された場合、1作目と同じ手法で乗り切れるかどうか。もしかしたら強引な演出に見えやしないかと懸念したのではないかと想像する次第だ。
原作自体が、映画版までのストーリーで一度、完結しているとも言えるので、続編は作らなくてもいいという原作ファンからの要望があることも事実。とはいえ、主要キャストの容姿が変わらないうちに続編を作ってほしかった…というのがファンの偽らざる気持ちではなかろうか。