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解釈を観客に委ねたラストシーン

『アイアムアヒーロー』(2016)

大泉洋
大泉洋Getty Images

監督:佐藤信介
脚本:野木亜紀子
原作:花沢健吾
出演:大泉洋、有村架純、吉沢悠、岡田義徳、片瀬那奈、片桐仁、マキタスポーツ、塚地武雅、徳井優、長澤まさみ

【作品内容】

 花沢健吾による人気漫画が原作。35歳にして漫画家アシスタントである鈴木英雄(大泉洋)は、彼女とは破局寸前の冴えない中年。ある日、英雄がアパートに帰ると、彼女は謎の感染により、ゾンビのような生命体『ZQN(ゾキュン)』の姿に変貌していた。

 ゾキュンが日本中に溢れ出し、逃げ出す英雄は、その道中で女子高生・比呂美(有村架純)と元看護師・藪(長澤まさみ)と出会う。彼らはゾキュンたちを相手に闘うことになり…。

【注目ポイント】

 公開当初から、大泉洋が主演の時点でヒットすることは間違いないと予想した人も多かったであろう。蓋を開ければ、R-15指定映画にも関わらず、興行収入16億円を突破。その評判は国境を飛び越えて海外にまで及んだ。

 従来のゾンビ物とは一風違い、ZQN(ゾキュン)となった者にも本来の人間の意思や習慣が残っており、普通に通勤や買い物へ行くなど、ユニークな描写が目を引く。何とも言えぬ切なさと不気味さが、映画ファンを魅了した所以だろう。

 さて、そんな本作のラストシーンはと言うと、人間達とZQN(ゾキュン)の最終決戦の末、生き残った人間は英雄と藪、比呂美のみ。特に行くあてもない彼らが車でその場を立ち去る…といった場面で映画は幕を閉じるのだ。

 この先にどんな未来が待ち受けているのか。彼らの行く末を観る者の想像に委ねる結末は最高にキマっている。“その先”を描く続編は蛇足になりかねない…。続編が作られない理由はここにあると筆者は考える。

 また、コロナ禍以前の作品でありながら「感染」をテーマの一つにしたことも、この数年間、続編の構想があったとしても実現を妨げる足枷となったのではないだろうか。現実に引っ張られて純粋な視線で映画を鑑賞するのが難しいのではないか? と製作陣が懸念したのかもしれない。

 コロナ禍は過ぎたと言われる昨今であるが、「パンデミック」の脅威は過去のものになったわけではない。人類に警鐘を鳴らすために、むしろ、続編を待ち望みたい映画の1本である。

(文・ZAKKY)

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【了】

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