感情の狭間を描く俳優・土屋太鳳の進化
これまでの土屋太鳳のイメージが一変したのが、2021年に公開された映画『哀愁しんでれら』だろう。度重なる不幸に見舞われすべてを失った女性・福浦小春が、1人の男性と運命的な出会いを果たし、人生が一変するというシンデレラ・ストーリーだ。
序盤の描かれる絵に描いたような幸せな結婚生活から、中盤のある事件をキッカケに徐々に歯車が狂っていき、最後には社会を震撼させる最悪の事件を起こしてしまう。鑑賞後の後味が悪すぎる胸糞映画の中でも「狂作」として邦画ファンの中でもいまだに語り草となっている作品だ。
過去のインタビューにて土屋太鳳は当初『哀愁しんでれら』のオファーを「小春が起こしてしまう事件が、どうしても受け入れられなかった」という理由で3回断っていたそう。その後、4回目のオファーで台本を読み「(主人公が)泣いている(ように感じた)というか。誰かわたしを見つけて、誰か自分の感情を伝えてほしいと言っているような、迷子のような、泣いているような感覚があって」と、オファーを引き受けた際にコメントしている。
このエピソードからも土屋太鳳がどれほど真面目な性格なのかが伝わってくる。そして「小春のような事件を絶対に起こさない」強さを持つ土屋太鳳だからこそ、逆説的に小春という役にとてつもないギャップが生まれ、とんでもない魅力となっていた。
そんな難役を経たからこそ、現在の土屋太鳳は単純な「喜怒哀楽」の感情だけではない、その間に無限に存在する繊細な感情を表現できる、素晴らしい役者になっていたのだ。間違いなく土屋太鳳は俳優として新たなフェーズを迎えている。これからますます目を離せない存在になるであろう土屋太鳳のこれから、そして百合子のこれからをいつまでも見守りたい。
(文・かんそう)
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