今にも消えてしまいそうな不思議な空気を醸成
深澤辰哉『わたしの宝物』(フジテレビ系)
夫以外の男性との子どもを、夫の子と偽って生み育てる「托卵」を題材としているとあって、放送前から注目度の高かった「わたしの宝物」。その作品で、深澤辰哉は“夫以外の男性”冬月稜を演じている。
主人公・美羽が夫との結婚生活に限界を感じているときに偶然再会し、冬月のもとで癒やされた美羽は一度だけ関係を持ってしまう。ところがその後、冬月は仕事で滞在していた海外で事故に巻き込まれ、美羽は彼が亡くなったと思い込んでしまうのだった。
疲れ果てた美羽にとって、昔のまま変わらずにいた冬月は、さぞ輝いて見えたことだろう。実際に冬月は優しい。ただ、同時に、どこか浮世離れしているようにも感じた。消えてしまいそうな、本当はそこにいないような、不思議な空気を纏っていた。そしてそれがそのまま、美羽に現実を忘れさせてくれる存在となったことの説得力にも繋がった。
美羽を見つめる瞳に象徴されるような、美羽を大事に扱うからこその冬月から発せられる柔らかさがそう感じさせたのかもしれない。グループ内で「リアコ製造機」とも呼ばれていると聞く深澤。大切な人やものに対する愛情表現の方法を、まだまだ隠し持っていそうだ。