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救いのない鬱回

シーズン10「逃げ水」(第2話)

水谷豊
水谷豊Getty Images

放送日:2011年10月26日
脚本:櫻井武晴

【注目ポイント】
 こちらの選出理由は”苦しみ続ける被害者家族と加害者家族”である。

 5年前に傷害致死事件を起こし2ヶ月前に出所した川北誠也(川野直輝)が遺体で発見される。

 加害者家族である川北家の母親は精神的に調子を崩し病死。父親の孝太郎(綿引勝彦)はマスコミや周囲への恐怖から失踪、姉の智子(石橋けい)はマスコミ対応に追われ、面会で更生していない弟を見て苦しんでいた。

 被害者家族である新開夫婦は刑に納得しておらず、損害賠償請求もして勝訴していたが、支払いはされず誠也への憎しみを募らせていく。探偵を使って出所後の誠也の行方を追うことに躍起になる一方、彼の姉である智子をストーキングする始末だ。

 そんな中、新開夫婦が突如マスコミに川北誠也への復讐殺人を実行したと発表する。

 捜査一課により発見された父・孝太郎は「自分は家族を捨てて逃げたので新開さんに何も言う資格は無い」と自嘲し、残された娘の気持ちが楽になるのを願うだけであった…。

 そんな中、特命係は川北誠也殺しの真犯人を逮捕する。犯人はなんと、孝太郎の娘であり誠也の姉である智子であった。
 
 誠也は出所後に姉を訪ねており、損害賠償の頭金だけ借金で払い、残りは踏み倒す気であった。そうなると再びマスコミに追われ新開夫婦も訪ねてくるかもしれない…。恐怖のあまり智子は弟を殺害したのである。

 智子は弟の罪ではなく、自分の行いが罰せられることに悲しみと同時に喜びも覚える。一方、孝太郎は娘が息子を殺したと知り、泣き崩れる。

 新開夫婦は、法律では救えない被害者感情があるということを世間に分かってもらうため、捜査妨害で警察に自首する。

「加害者には一生を懸けて償ってほしい」。被害者家族だけでなく加害者家族も同じ思いであろう。加害者が犯した罪の責任をとらず逃げ続けた結果、本人は命を落とし、残された者は恨む対象すらいない、やるせない気持ちにさせられる。

 現実でも、損害賠償請求をしても本人に支払い能力が無い、あるいは雲隠れされると差し押さえもできず、被害者が泣き寝入りするケースは少なく無い。また、損害賠償請求をしていることがわかると、被害者遺族に”金目的”という誹謗中傷すらついて回る。

 そうなると出所後も贖罪の気持ちを持ってほしい被害者家族は罪から逃れる犯人を憎んで苦しむことになる。また、加害者家族も罪を背負っている気持ちになり苦しくなる。実際に重大事件において、加害者家族が自殺するケースは多く見られる。

 本作ではシーズン7「ノアの方舟」で登場した渡哲也が演じる瀬田法務大臣が弁護士として再登場している。彼の存在が数少ない救いになっているので、そちらにも是非注目してもらいたい。

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