スクリーンを支配する「異質な存在感」
しばらくは「A」「R」「T」のアルファベットを見るだけで震えが止まらない日々が続いた。しかし、それを超える衝撃が私を襲った。2010年公開の映画『君に届け』。原作の大ファンだった私は、君に届けの実写化に一抹の不安を覚えながらも、もちろん劇場に足を運んだ。そして、映画は個人的には大満足の出来だった。
主演を務めた多部未華子(黒沼爽子役)、三浦春馬(風早翔太役)はもちろんのこと、蓮佛美沙子(吉田千鶴役)、夏菜(矢野あやね役)、桐谷美玲(胡桃沢梅役)、青山ハル(真田龍役)と周りを固めるキャストもピッタリで、役者の瑞々しさと原作の持つ雰囲気が合致した、まさに実写化の成功例とも呼べる作品になったのではないだろうか。
そして何より担任教師・ピンこと、荒井一市を演じたあの男。自己中心的に見えて実は生徒のことをよく見ているあの癖のあるピンをよくここまで実写に落とし込んだな…原作のような豪快なガサツは現実的なレベルに抑えつつ、あの魅力的なキャラクター性はしっかりと表現されている、誰だ?この俳優は…。
目を疑った…真夏の太陽のように明るい男を演じていたのは、そう、蛇にピアスで狂気の男を演じたあのARATAと同一人物だった。
それからというもの、出演「ARATA」そして改め「井浦新」と名がつく作品はほとんどチェックした。映画はもちろん、ドラマでもその存在感はまさに「異質」。
井浦新が画面に登場するだけで「なにかある」と思わせられてしまう唯一無二の雰囲気を持っていた。そんな井浦新の出演作の中でも、私が特に魅力的だと感じたのはドラマ『アンナチュラル』(TBS系、2018)の中堂系、そしてドラマ『最愛』(TBS系、2021)の加瀬賢一郎だ。