手に汗握る頭脳戦にハラハラ…。
天才・藤原竜也の演技が光る珠玉のサイコサスペンス
『デスノート』2部作(2006)
監督:金子修介
原作:大場つぐみ 小畑健
脚本:大石哲也
キャスト:藤原竜也、松山ケンイチ、瀬戸朝香、香椎由宇、細川茂樹、満島ひかり
【作品情報】
「このノートに名前を書かれた人間は全員死ぬ」―。そんな文面が記されたノートを拾った夜神月(藤原竜也)は、他人の名前をノートに書きこみ、書き込んだ相手を死なせてしまう。
恐ろしいノートの力に戦々恐々とする夜神。しかし、やがて、味を占めた夜神は、理想的な世の中を築くべく、凶悪犯の名前を書き連ねていく。
【注目ポイント】
「努力・友情・勝利」をテーマに、少年たちの心に刺さる正統派漫画を送り出してきた『週刊少年ジャンプ』。しかし、中には、この公式に当てはまらない傑作もある。その代表格が、累計発行部数2,650万部を記録した大ヒット作『DEATH NOTE』だろう。
大場つぐみ(原作)、小畑健(作画)という“『バクマン。』コンビ”が送り出す本作は、名前を書くだけで人間を殺せる「デスノート」をめぐるサイコ・サスペンスものだ。
とはいえ本作、少年漫画らしいバトル要素がないわけではない。主人公の夜神月が、複雑かつ高度な頭脳戦を展開し、警察やFBI捜査官、そして、ライバルの名探偵Lをも出し抜く姿は、読者の胸をワクワクさせる。
さて本作、ジャンプ史上屈指のヒット作とあって、これまで幾度となく実写化されてきた。中でも有名なのは、2006年に公開された『デスノート』2部作(『デスノート』『デスノート the Last name』)だろう。
監督は、『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(2003)などの平成ガメラシリーズで知られる金子修介。主人公の夜神月を藤原竜也が、宿敵のLを松山ケンイチが演じる。
公開時は前編後編合わせて興行収入80億円のヒットを記録し、15年を経た今も根強い人気を誇る本作。その人気の秘訣は、なんといっても主演の藤原竜也の演技にある。
『カイジ 人生逆転ゲーム』(2009)の伊藤開司や『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(2012)の志々雄真実など、エキセントリックなキャラクターに確固たるリアリティを与えてきた藤原。本作では、夜神になりきるのではなく、夜神の要素を抽出して自身の身体に「受肉」させることで役を完全に自家薬籠中の物にしている。
そして、もう一人、L役の松山ケンイチも忘れてはならない。当時デビュー5年目と、まだまだ駆け出しだった松山だが、猫背やしゃべり方など、完全に原作のLに擬態している。特に、夜神と対峙する前半のクライマックスシーンでは、新人とは思えない堂に入った演技で、藤原とがっぷり四つに組んでいる。
なお、藤原は、本作について、「これがあったからこそ、今の自分があると言ってもいいくらいの作品」と語っている。そうした意味で本作は、藤原、松山双方の出世作となった作品と言えるだろう。