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アイは“欲張り”なのか?

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
©赤坂アカ×横槍メンゴ集英社推しの子製作委員会

次に『【推しの子】』という作品自体の特徴に人気の理由を見出していこう。

アイドルという一見すると華やかでキラキラした夢のあるテーマを扱いながら、あえて夢を打ち砕くようなネガティブな側面も描いている。

そもそも1話からしてアイドルが妊娠というタブーを犯しているし、その事実をマスコミ非公開にすることで、結果的にファンに嘘をついて騙している。

それ以外にも、成長してしまった有名子役の紆余曲折、恋愛リアリティショーの炎上、再結成した『B小町』デビュー時の泥臭い宣伝活動の裏側など、芸能界の華やかでもキラキラでもない側面にフォーカスしたシーンには事欠かない。

夢を打ち砕く要素は数多いが、とりわけ、アイドルが妊娠・出産・育児を経験していながらそれを隠し通すという展開は、現実のアイドルでは考えられない、センセーショナルな設定だろう。

実はここには、「夢を見せるための嘘はいけないことなのか?嘘はどんな理由でも許されないのか?」、「なぜアイドルが恋愛したり、子どもがいてはいけないのか?」、「そもそもアイドルという職業とは何なのか?」という複数の問題提起が隠れていて、いろいろと考えさせられる。

確かに「アイドルが妊娠して、それを隠し通して活動を続ける」という行動の表面だけ聞くと、倫理的にタブーな気しかしない。だが、その背景には「母としての幸せ」と「アイドルとしての幸せ」のどちらも欲しいというアイの想いがある。

本人はそれを「欲張りなんだ」と評していたが、これは欲張りなことなのだろうか。端的に言えば「仕事と家庭を両立したい」と言っているだけだからである。

そんな願い、未成年の16歳で妊娠という設定を考慮から外せば、ダイバーシティやジェンダーフリーがもてはやされている令和の時代では当たり前ではないか。しかし、なぜかアイドルがそれを言うと叩かれる風潮がある。

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